徳之島採集記 〜奇跡の最終日編〜
(8-9.IX.2013)
参加者:かっきー



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(前編までと文体が違いますが… 気にしないでください)

長旅の疲れもあり、そこまで真面目に探していないとはいえ、やはり1頭もマルバネを採らずに帰る気にはなれない。残されたチャンスは今晩だけだ。
やや焦りつつも、奄美で特大を採ったんだから最悪ボーズでも諦めはつくかなぁ、なんて思ってしまう。
気合を入れるためにちょっと高めの弁当を買い、一昨日採集出来なかったポイントの近くへ。
とりあえず林道の終点までゆっくりと車を走らせ、良さそうな環境を探すが多くはない。
一昨日の場所以外に2か所ほど比較的良さそうなポイントを見つけたので、まずは上部のポイントを攻めることにした。
ポイントの近くの退避スペースに車を停め、森に入ってみるとマルバネが発生していてもおかしくない木が10本ほど。
あまり深く森に入るのも大変だし、今夜はここで勝負を掛けよう。

早めの夕食として弁当を食べ、暗くなるまでは林道でアマミハンミョウを採集しつつもう1か所の下見も済ませる。こちらのポイントも1か所目と同程度には良さそうだ。
徳之島のアマミハンミョウは基本的に青色で、緑色の個体があまり採れていなかったので追加を狙いたいところだが、このあたりは青緑の個体の割合が多い。
相変わらずの下手な網裁きで、視認した数の半分も採集できなかったが、10頭ほど採集したところで暗くなり始めたので森に入る準備をする。
準備が出来たら暫し車内で休憩、19時過ぎからから森に突入。
いつも通り、長袖長ズボンで頭と首にタオルと巻き、ヘッドライトとHID懐中電灯、それに1.5mのアルミ竿と50p口径の四つ折り枠を装備。足下はスパイク長靴である。
徳之島では樹上に多いというハブに警戒しながら、いかにも発生していそうな根元にフレークの溜まったシイを見て回るが、マルバネの姿はない。
狭い場所にも拘らず1時間近く粘っただろうか、しかし結局採集は出来なかった。
やはりこんな林道沿いの入りやすい場所では発生していないのだろうか…

少し移動してもう1か所のポイントへ。
途中の林道沿いにも何本かマルバネが発生していてもおかしくない木を確認しているので、ゆっくり車を走らせながら1本1本HID懐中電灯で照らしていく。
ま、いくら木があってもこんな林道沿いで発生しているとも思えな…… いた!!!
林道沿いの直径50pほどのシイの木の、高さ5mほどの場所に見える黒光りする影、間違いなくマルバネだ!
急いで車を停めてもう一度確認。うん、間違いない。
この木は斜面に向かって斜めに生えているので、登るのは難しくなさそうだ。
網や軍手を用意する時間すら我慢できず、ハブがいないことを確認して素手で木に登る。
そしてついに、徳之島のアマミマルバネを我が手に!



写真は採った木のすぐ傍で撮影。ガードレールが写っていることから、本当に林道沿いで採れたことがお分かりいただけると思う。
採った木はこんな感じ。



残念ながらサイズは56mmくらいと小さいが、左大腮にはタテヅノが出ており奄美産よりも大腮の発達が良いことが覗える。
この個体を採ったシイも根元にはフレークが溜まっており、おそらく発生木についていたものなのだろう。
1頭採れれば俄然勇気が湧くもので、その周辺、つまり下見していた2か所目のポイントで隈なく探すが、追加は得られない。
まあ、満足できるくらいの数は奄美で採っているし、1頭だけでも徳之島ラベルが採れれば十分かと車に戻った。
奄美と比べてやや発生時期が遅いと言われる徳之島では、おそらくまだ出始めたばかりであまり採れないのだろうなどと自分に言い訳しながら山を降りる。
途中で林道の広いスペースに2台ほどレンタカーが止まっているのを確認。こんなところにレンタカーを停めるのは間違いなくマルバネ狙いの採集者だろう。
まだ徳之島では発生最初期のはずだが、気の早い採集者がいるものだ。私も人のことは言えないが。

もう半ば満足していたのでバナナトラップでも見に行こうかと思ったが、急に昨日根元で死骸を拾った木を見に行きたくなってきた。
いや、見に行かなければという義務感に駆られはじめた。何故だろう、今日あの木を見に行けばマルバネが、それも特大が採れそうな気がする。
その場所に向けて車を走らせ始めると、その直感はむしろ確信めいたものに変わっていく。採れる気がする、いや絶対に採れるはずだ。
あの木の周囲にも発生していそうな木はあったが、とにかくあの木だけでいいから見に行こう。行かないと絶対に後悔する。
根拠のない自信に溢れつつ、林道を走りポイントの入口へ。
その木は林道からそう遠くない場所にあり、水も持たずに最低限の装備で森に入る。
そして到着。木の上を照らしてみると、3m程の高さにマルバネが!本当にいた!それもかなり大きくないか…?
この高さなら登る必要もないので、1.5mの竿を伸ばして枠でつつき、無事にネットイン。
出してみると…… なんだこの歯形は!しかもデカい!!!!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!




震える手でノギスを当ててみると、明らかに62mmは超えている… 紛れもなく特大だ。
「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁ」とひとしきり叫んだ後、木にくっつけてヤラセ撮影。



何というか、山に、この木に、このマルバネに呼ばれた気がしたのだ。
これでも理系学生の端くれなので非科学的なことはあまり信じない方なのだが、こんなことがあるとなぁ…
落ち着いたところで、奄美でのマルバネ採集に同行させていただいた方に連絡。
何だか汚い言葉も浴びせられた気がするが(笑)、祝福していただけた。そりゃ逆の立場だったら超悔しい。
周りの木など見る気も起らず、車に戻って一息つくことにする。
これ以上のサイズが採れるはずもないので、もうマルバネには満足。あとは2か所のバナトラを見てくるだけだ。
集落まで下り、コンビニの駐車場でマルバネを眺めながら休憩。すごいものを採ってしまった…

一休みしたらまた移動を始め、日付が変わるころにシカ狙いでバナトラを掛けたポイントに到着。上から順に掬っていく。
今日もコクワは多いが、やはり徳之島のシカは厳しいか… ん?これはシカじゃないか!



小型の♂、いわゆるバンビちゃんではあるが確かにアマミシカだ。最終日にして遂に採れた。徳之島では奄美と比べ採集例が少ないので、これは本当に嬉しい。
そして次のバナトラではコクワが2♂だったが、なんかデカい…
1頭は36o近くある特大で、もう1頭も32oは超えている。これまでは30oオーバーなど1頭も見なかったのに。
リュウキュウコクワの各亜種の中では最も個体数が多いトクノシマコクワとはいえ、そう簡単に採れるサイズではないだろう。



特大のコクワに気を良くして残りのバナトラも掬っていく。コクワ♀がいくつか。
そしてこのポイント最後のバナトラ。いくつか黒い影はついているので、コクワくらいは来ているのだろう。掬ってみると…
シカが2♂1♀!しかも♂のうち1頭ははまあまあのサイズで歯形が良い!



計測してみると36o。奄美で採れた最大個体には及ばないが、このくらいのサイズになるとシカらしい形になってくる。
シカは奄美・徳之島で一番好きなクワガタなので、嬉しすぎる。何なんだこの最終晩の引きは…

そして最後のバナトラポイント、ヤマトサビの有名産地へ。
サビは既に4♀採集しているが、♂も欲しいところ。今日のこの引きなら採れる気がする。
下草が茂っておりマルバネ採集並みにハブが恐いポイントだが、一つ目のバナトラを裏返してみると…
いた!ヤマトサビの♂!!!



これでついに目標を全て達成してしまった。恐ろしい夜だ。
他のバナトラも見て回るが、サビの追加は出来ずヒラタがついていたのみ。この場所ではヒラタが本当に多い。
そのままポイント近くの駐車場で就寝。

翌朝は掛けたバナトラを全て回収。当然のマナーであるが、放置されたトラップが少なからず目につくのを見ると出来ない人もいるらしい。
トラップの回収すらできない人は昆虫採集などするべきではないと思うのだが。
回収した際にヒラタ2♂とスジブト1♂が採集できた。このヒラタが今回徳之島で採った中では最大だが、それでも60mmにすら届いていない。
その後は不要な荷物をまとめて自宅に送り、レンタカーを返す時間まで少し観光。
夕方にはレンタカーを返してフェリーに乗船、翌日朝に鹿児島港着。
飛行機は夜なので、日中は天文館周辺を観光したが、大半の時間を鹿児島県立博物館で過ごした。
自然史系の博物館で、入館無料の割には充実した展示だと思う。
帰りも時間に厳しいLCCということもあり、バスで余裕をもって鹿児島空港に移動、飛行機の時間までは天然温泉の足湯に浸かって疲れを癒す。無料だが非常に快適。
飛行機は予定よりも早く成田に着き、10日深夜に無事帰宅。1か月近くも家を空けていたのは初めてだが、無事に帰宅できた。
これにてこの長旅も終了。

最後に、今回の旅でお世話になった全ての方にお礼申し上げます。
初の南西諸島でこれだけの成果を出せたのは、当然筆者一人の力ではなく多くの方にお力添えいただいたからに他なりません。
特に、南西諸島での採集はド素人だった筆者に短期間でノウハウを叩きこんでくれた九大の夏風邪氏、
そして日頃からお世話になっており、今回も奄美で同行させていただいたり各地のポイント情報を教えてくださったK氏のお二方には頭が上がりません。
今後ともよろしくお願いします!

なお、2013年から徳之島の原生林には広く森林生態系保護地域が制定され、地域内での昆虫採集は原則として禁止されています。
当然ながら、筆者は規制されている地域を詳しく調べた上で法令を順守して採集を行いました。
しかし、この森林生態系保護地域の施行に関しては、現在のところ全く公式な周知が行われておらず、所轄する森林管理局に問い合わせない限り知ることはできません。
規制が掛かるのは仕方がないとしても、トラブルを避けるためにもその周知は徹底していただきたいものです。

以上、初めての奄美・徳之島採集記でした。


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