奄美大島採集記 〜後編〜
(26.VIII-1.IX.2013)
参加者:かっきー



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夏風邪氏と別れると、拠点を島の北部から南部へと移動。
南部でもトラップに集まるクワガタとアマミミヤマを採集し、最後の数日はアマミマルバネを狙います。
ここからはパジェロミニを借りたので、ダートも怖くない!

瀬戸内町の海は非常にきれい。
「男一人で」というのは非常に寂しいものですが、海辺で遊んだりもしました。



滞在中は毎日のように海水浴場の無料シャワーを利用させていただきました。

バナトラを掛け終えると、北部でやったのと同じように電柱の見回りへ。
アマミミヤマは南部でも数か所で毎晩観察できました。



微妙に北部の個体と歯形が違うような気もしますが、個体変異の範疇でしょうか。
掛けておいたトラップにはヨツバコガネが。南西諸島らしい美しい個体です。




日中、夏風邪氏を巻き込んで某所に設置したトラップを回収すると、狙いの虫が来ていました。



奄美大島と徳之島の極一部のみに分布する、マルダイコクコガネです。
本土に分布するダイコクコガネと同属ですが、後翅が退化して飛べない特異な種です。
これでも♂ですが、小さすぎて採った時には♀かと思いました。
徳之島産は最近別亜種として記載されたため、それに従えばマルダイコクコガネ原名亜種となります。
本種は徳之島では個体数が多いものの、奄美大島では近年非常に個体数が少ないとのこと。
おまけに記録のある地域の殆どで法律や条例により採集が規制されており、実質採集禁止とまで言われています。
今回は採集に規制のない場所で狙ってみましたが、何とかごく少数の個体に出会うことが出来ました。
他にもオオシマセンチコガネやウシヅノエンマコガネ、アマミエンマコガネ、そしてアマミスジアオゴミムシ等のこの地域固有の甲虫も得られました。
登山道にはアマミハンミョウが多数。



数日間掛けておいた南部のバナトラは、場所が悪かったのか数頭のノコギリが来ただけでした。
これから移動させるのも面倒だし、終盤はマルバネに集中したいのでお片付け。

アマミマルバネクワガタは8月の終わりから発生し始める種で、奄美大島と徳之島、請島(別亜種)の3島に固有の非常に魅力的なクワガタです。
採集は危険なホンハブのいる夜の原生林に突入し、スダジイの古木を見て回るのが一般的で、日本一採集の危険なクワガタと言われています。
今回、最後の2日間はいつもお世話になっている知人が奄美にマルバネを狙いに来るとのことで、同行させていただけることに。
全く経験がないのに一人で夜の原生林に入るのは恐いので、ありがたいことです。
しかし、何とその時期に台風が来るという予報。直前の予報では、勢力が弱まり進路も逸れるだろうということになりましたが、
もしかしたら雨で採集にならないかも…
ということで、アマミミヤマ採集中に出会った方に教えていただいた山の名前を頼りに、予定より1日早く一人でマルバネを狙ってみることに。
まあ、明日以降が本番なので、今日は軽く入ってみる程度。採れたらラッキーでしょう。

夕方に聞いていた山に着き、林道の脇に太いシイが見える場所から藪漕ぎして斜面へ。
思ったより足場は悪くなく、マルバネが発生していそうな太いシイも少なからずあります。
概ね林内の状況は掴めたので、今夜はここに入ってみることにして林道に戻り、カップ麺で腹ごしらえ。
ゆっくり休憩し、周囲が完全に暗くなってから森に入ってみます。
装備は長袖長ズボン、首と頭にはタオルを巻き足下はスパイク長靴。
当然森の中に明かりはないので、非常に明るいLEDのヘッドライトとHID懐中電灯を使います。
太いシイを一本ずつ確認しながら、斜面を降りること20分ほど。
とあるシイを照らしてみると… いた!!!
慎重に網を伸ばしてネットイン。で、でかい!



震える手でノギスを当てると、軽く58mmは超えています。人生初のマルバネがこんな大物とは!
こんなに簡単に大型個体が採れてしまっていいんでしょうか…
興奮が収まらず、これ以上森に深入りするのは危険と判断。周辺の数本の木だけ確認して林道に戻ることに。
10mほど離れた木を見ると… またいた!
手が届く高さだったので手掴み。ちっちゃい…



一応計ってみると52mmほど。このくらいが平均サイズでしょうか。
斜面を這いあがり、無事車に戻ってきてもまだ興奮が収まりません。
落ち着いてからいつも泊まっている場所に戻り、採ったマルバネを眺めてから就寝。

翌日の30日は知人と合流させていただき、トラップを設置してからマルバネ採集。
知人の後について山に入ると、数分で早速見つけた様子。流石、慣れた人は見つけるのが上手いです。
数分後、知人がスルーしたシイが気になったので見に行くと…
いた!それも2♂!しかも片方超デカい!!!



昨日採った個体よりも明らかに歯形が良いです。
ノギスを当てると、ギリギリ60mmに届かないか… といったところ。
このくらいのサイズになると本当に格好良いです。
その後も体力が尽きるまで探し続けましたが、筆者は数頭しか追加が得られませんでした。
発生初期のためか♀は少なく、筆者も知人も1頭ずつ採集したのみ。

31日はまずトラップを回収。
そこには何と、あれだけ探しても採れなかったアマミミヤマクワガタの♀が!



これは本当に嬉しいです。他にも多くのクワガタやコガネ、セミ等が回収できました。

日中は採集を控え、海岸でシャワーを浴びたり観光したり。
明るいところで昨日採った特大マルバネを撮影したりも。
タテヅノが出ており、奄美大島産としてはかなり歯形が良いと思います。



夕方にトラップを再設置し、マルバネのポイントに向かいます。
まだ完全に暗くなる前から少し森に入ってみると、早速1頭採集。
やはり異常に多いです。



一旦林道に戻り、装備を整えてから再度森へ。
林道のすぐ脇の巨大な倒木でも採集。
森に入ると、やはりそれなりの頻度で木についているマルバネが採集できます。
流石に3日連続で特大が採れるはずもなく、この夜の最大は55mm程度でした。
それでも奄美最終晩ということで昨日よりも遅くまで粘り、数としては昨日よりも多く採集できました。

朝になると再びトラップの回収へ。
アマミミヤマの追加は採れませんでしたが、これまであまり採れていなかったアマミシカの♀が複数採集できました。
さらに、何とアマミマルバネの♂も!小型ではあるものの、島内3産地目のマルバネとなりました。
その後は知人と別れ、林道でアマミカラスアゲハを何頭か採ってから名瀬に戻りました。
徳之島には早朝の船で渡るため、夕方に車を返してから待合所が開くまでは24時間営業のファミレスで夜を明かしました。
続きは徳之島編で!

ちなみに今回の採集には百均のプラスチックノギスを持参したのですが、これで計ると金属製の正確なノギスよりもコンマ数ミリ小さく出るようです。
帰宅後に正確に計測したところ、1頭目は59mmアップ、2晩目に採集した特大個体はギリギリ60mmに届いていました。

最後になりますが、2013年10月1日より、奄美大島では今回採集した昆虫のうちアマミミヤマクワガタ、アマミシカクワガタ、
アマミマルバネクワガタ、マルダイコクコガネの4種が条例で採集禁止となってしまいました。
今回、実際に現地で採集した印象としては、アマミミヤマは十分な個体数がいる上に採集される個体の殆どが♂であること、
アマミシカもトラップでコンスタントに採れることからあまり採集禁止とする意義が見出せません。
また、アマミマルバネクワガタは毎年のように採集者が入っていた場所であるにも関わらず、今年は過去に例がないほどの大発生となり、
一方で以前は有名だった島北部の産地では、森を切り開いてゴルフ場等が開発されてからは絶滅に近い状況となっていると聞きました。
マルダイコクコガネについても、上で触れたように生息地の殆どで既に採集が禁止されており、改めて指定する意義はあまりないと考えています。
これまでにバナナトラップの残骸を放置するなどして地元の方に迷惑をかけてきた虫屋側にも大いに反省すべき点はありますが、
(実際、かなりの数の放置されたトラップを見かけました)
この採集規制、筆者には一部の島民の方々の「島の虫を採られることへの反感」を発端とした、
奄美の世界自然遺産登録のためのアピールに過ぎないように思えてしまいます。
希少だからと採集を規制するのであれば、せめて生息地の保全には万全を期してもらい、
個体数が増えたことが確認された場合には規制を緩和するくらいの柔軟な対応を望みたいところです。
採集禁止となった昆虫が、その後開発等により絶滅してしまったという残念な事例もよく耳にします。
たとえ採集はできなくても、いつまでも奄美の森の中で固有の昆虫を観察できることを切に願います。


By かっきー


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