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Serangga dari Indonesia

―Mt.Arfak 1,2日目―

(27,28.U.2014)

参加者: いーぐる, ゾンネ, dazai39


或る有名な詩に


「智恵子は東京に空が無いといふ、

ほんとの空が見たいといふ」


という一節があります

この詩の中にある「ほんとの空」とは何なのでしょう

少なくとも私にとって

気分さえも薄濁らせる灰色の冬空でないことは確かです

どうも冬の空は、陰惨でいけません

蒼穹を飛翔する姿が在ってこそ

私にはほんとうらしく思われます


いのちあるうちに見てみたいものが、人には一つあるものです

わたしにとって、それはトリバネアゲハ(Ornithoptera)でした

図鑑の中で、また標本箱の中で色とりどりに輝く姿は

見る者すべてを魅了します

しかし、それはあくまで、いのちの抜け殻にすぎません

空を自由に舞う姿こそ、本当の姿だと私は思うのです


重ねて謂えば

ほんとうの空に舞う、ほんとうの姿を見ることが

今回の私の目的なのです

先の詩家の言葉を借りるならば

「瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐる」

そんなかれらをみるために

わたしはここへやってきました


嘗てCairns(Australia)で見たulyssesに再会し

息をのむような碧に魅了された昨日

自然の神秘を改めて感じさせられました私ですが

今日は一路、Mt Arfacへ向かいます


岩崎家伝来の車は

陽気な運転手の華麗なハンドルさばきにより

途中幾重もの川を横切り

悪路へ轍を刻んでゆきます

後部座席に乗る学生三人は

中央のS氏、失神する中

私一人目を爛々と光らせておりました

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そんな行程も

マノクワリから2時間もすると開けた部落が現れ

拠点となる山小屋にたどり着きます

平地は30℃を優に超えますが

高度計で1500mを記録するこの部落は

気温25℃程度といったところでしょうか


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荷物を置いて繰り出すと

Delias(カザリシロチョウ)が猛烈なスピードで横切って行きます

昨年、Baliで見たDeliasとは飛び方が全然違うのです

トリバネアゲハは赤い色合いに反応するため

地面には赤い布を敷き、私は赤い服を身に着けます

あわよくば私に向かって飛んでくるトリバネアゲハが見られる…かも

11時に観察を開始し、暫く待っていると

白と黒の点滅が見えました

案の定、ガイドのJ氏が「トリバネ!」と叫び

私も実像をつらまえました

ゴライアストリバネアゲハ(O.goliath)の♀です

このメスは吸蜜をするとすぐさま飛び立ってしまい

近くで観察することはできませんでしたが

その大きさは「世界最大の蝶(面積で)」という名を冠するのにふさわしい

圧巻の姿でした


しかし、Arfakは気候が急変しやすいと、

OBのAさん、Detaniさんから伺っていた通り

12時を過ぎると霧が立ち込め

周囲は雲の只中に入ってしまいました

この日はいーぐるが最後に観察したゴライアスを最後に

トリバネは現れませんでした


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昼食をとりに山小屋へ戻ると

急に雨脚が強くなり、とんでもない豪雨になりました

日本で一時期囁かれた「ゲリラ豪雨」の比ではありません

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しかし世話をしてくれる人や、部落の人は

さりとて狼狽する気色も見せず

てんで気に留めておりません

やることが無いので二人は昼寝に入り

私はJ氏と

トリバネアゲハに関して色々話をしました


実はこの部落にはJ氏の持つトリバネアゲハの飼育場があって

今日観察したのもこの飼育場の横なのです(勿論野外個体です)

トリバネアゲハは世界で最も大きい蝶であり

雄は煌びやかな金翠、金碧、金銅を呈するのに対し

雌は一見地味な黒と白、茶色を基調とした色合いです

実は日本に分布するジャコウアゲハの近縁で

食草もAristolochia(ウマノスズクサ科)です

ウマノスズクサには一般にアルカロイド毒が含まれており

これを摂取することで体内に毒素をため込みます

仮に鳥がこのむしを知らずに食べると、毒があるので吐きだし

それがまずいということを学習し、襲わなくなる…

というのが教科書的な説明です

幼虫の姿、蛹の姿はジャコウアゲハを髣髴させるものがあります

(卵、幼虫、蛹、成虫、どの段階をとっても圧倒的な大きさですが)


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ジャコウアゲハを見ると分かりますが

飛び方は「食えるものなら食ってみろ」といわんばかり

ゆったりと飛んでいます

トリバネアゲハも飛び方はゆっくりですが

高所では旋回すること

滑空することがやや異なります

(上空を飛翔している際は割合高速で動きます)

その大きさも手伝って、他の鱗翅目に比べ筋肉量も多く

長距離の飛翔も可能であるとされます


しかしそんなトリバネアゲハも

絶滅の危機に瀕する動物となっており

ワシントン条約に於ける保護がかけられています

ワシントン条約には付属書T〜V種までがありますが

トリバネアゲハの場合、アレキサンドラトリバネアゲハがT種

その他の真正トリバネアゲハ、キシタアゲハ、アカエリトリバネアゲハが

付属書U種の指定を受けています

さて、Mts. Arfakに分布するトリバネアゲハは

プリアムス、ゴライアス、ロスチャイルディ、チトヌス、パラデシア

の計五種が記録されていて

これらは付属書U種として保護を受けます

今回お世話になるJ氏はトリバネアゲハの飼育許可を持っていて

飼育場内でトリバネアゲハを飼育し、種の維持を図っています

日本でみられる正規のトリバネアゲハの標本は

この様な飼育場で生まれた、付属書U種のトリバネアゲハが

正当な許可(CITES)のもとに輸出入されたものに限られます



さて、豪雨も3時間ほどで下火になり

6時ごろからはライトトラップの準備に取り掛かります

若干小雨ぱらつく中、果たして成果はいかほどに


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2時間後

日本では考えられない量の蛾が集まってきておりました

勿論、甲虫(とりわけ小昆虫)は多いのですが

埋め尽くす蛾の量に辟易です

小昆虫はゾンネ氏が担当し

私は主に大きめで、綺麗な蛾を観察していました

写真はいーぐる撮影になります


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食事をとって暫くした8時過ぎ

持参の懐中電灯(35W)で遠方を照らします

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なんというのでせう

やたら飛び方が下手な、蝙蝠様の巨大物体が近づいてきます

至近距離で見てみると…

ヘラクレスヤママユ(Coscinocera hercules)です

余りの大きさに記念撮影

この個体は雄で、尾が長いです

ニューギニア島、オーストラリア北部(クイーンズランド州)

に分布するようですが

日本にも分布するヨナグニサンの代替種といったところなのでしょうか


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11時くらいまで観察を行い、膨大な数の蛾と甲虫を見ることができました

疲れも手伝い早めに就寝です




2月28日

5時30分

鶏鳴と共に徐に起き上がる

思いのほか 朝方は冷える

セ氏15度くらいであろうか…

身辺準備をしていると二人も起き

一日が始まります


基本的に行動は昨日と変わりませんが

時間は早めにスタートです

ポイントまでは徒歩5分で

8時くらいから観察開始

若干風がありますが 晴れ渡っております

期待して待っておりますと

9時半ごろ

プリアムスの♀が現れました

立て続けにプリアムスの♀がもう一頭飛来し

10時半にはチトヌスの♀が飛来

飛んでいる時は後翅が見え、チトヌスは黄色が目立ちます

ゴライアスも黄色は目立ちますが

サイズがチトヌスに比べ基本的に大きく

チトヌスの方が、黄色部の占める割合が大きいことが特徴です

11時過ぎには別ポイントで観察を行いますが

トリバネは飛来せず、Delias、マダラ、ミスジがちらほら

平地に比べチョウの種数は少ないのかしらん


午後1時からは例の如く豪雨なので時間をつぶし

午後6時からはライトトラップ

蛾は相変わらず多く、今日はセミと甲虫が多く飛来しました

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大まかな流れはこんな感じで

晴れるときは晴れるし

雨が降る時は雨が降る

虫が飛来する時間も大体共通で

慣れてしまえば非常に安定したスケジュールです

Mt Arfac前半戦はかくの如くに御座いました



TO BE CONTINUED

Serangga dari Indonesia
‐麗翔‐ へ


by dazai39

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