今日はバリ島からティモール島へ向かう移動日になっています。
他のメンバーよりも早く帰る僕にとっては実質的にバリ島とのお別れです。
残念ながら今回は観光を少しもしなかったので、次回は純粋な観光としても来てみたいですね。
次なる目的地、ティモール島での最大の目標はギラファノコギリクワガタ(Prosopocoilus giraffa)を見ることです。
ギラファノコギリクワガタと言えば、僕のようなムシキング世代の人間であれば虫屋じゃない人ですら耳にしたことのある強いクワガタです。(語彙力)
長い大アゴの迫力もさることながら、そのあごの途中にあるくびれが何ともセクシーな雰囲気を醸し出していて魅力的です。
種小名にある”giraffa”とは”giraffe”つまりキリンのことで、命名者はその長い大アゴをキリンの長い首に例えたのでしょう。
キリンの名は麒麟という伝説上の生き物からとられているというのは有名ですが、その麒麟には角端(かくたん)と呼ばれる黒い種類もいるんです。
そして、ギラファノコギリクワガタの体色は黒色です。
皆さんもお分かりですよね?
ギラファノコギリクワガタは現代に現れた角端の化身といっても過言ではないのです!!
和名を今からカクタンクワガタに変えても遅くないですよ、お偉いさん。
カクタンクワガタ………いや、やっぱださいかw
えー、失礼しました。話を戻します。
ティモール島にいるギラファコギリクワガタは、亜種に分類されていて正式な学名はProsopocoilus giraffa timorensisになります。
原名亜種に比べるとやや小型であるらしく、100ミリを超えるようなことは無いんだとか。
いずれにせよ、日本にいるクワガタとは比較にならない迫力を持つことは明らかなので、非常に楽しみです!
さて、13:35クパン発、15:20デンパサール着のガルーダ・インドネシア航空の飛行機でティモール島へと向かいました。
飛行機の中では機内食が出されたり、映画を流していたりと値段の割には結構サービスは良くて快適です。
機内食
映画を観れるモニター
ボヘミアン・ラプソディーがあったので観ようとしてみたのですが、字幕がインドネシア語しか無い………
途中で話を追うのが厳しくなってフレディの実家にメンバーを招待したシーンのあたりで断念しました。笑
ティモール島は「地球の歩き方」にも大した情報が乗っていない僻地なだけあって、空港はバリに比べてだいぶしょぼく、未踏の地に来た感があります。
ここから先、西ティモールの真ん中のあたりに位置する宿までは車で3時間程度かかるので荷物を受け取り次第早々に出発しました。
道中、大きな川のそばで休憩
実は
ティモール島での宿は僕たちもどんな宿か事前にわからなかったこともあり若干の不安を抱えていたのですが、いざ着いて見ると極端に劣悪な環境ではなく安心します。
僕とじょえるの二人部屋
とはいえバリの宿に比べると多少劣っていて、シャワー室はカーテンによる仕切りがないユニット式だったり、アリの巣があってアリが壁に列を作っていたり、お湯が安定して出なかったりといった感じで少し厄介で、浴室のドアの気密性が低いので部屋の湿度がかなり高くなるのが少し不快でした。
宿についたときはもう日が暮れそうなくらいだったので、ティモール島での採集でお世話になる村へ向かいます。
宿から村へも1時間半くらいかかるので現地についた頃にはあたりは完全に真っ暗です。
村には電気が通ってないのか、外灯らしきものは確認できません。
そして、ここで最初に観た昆虫はこの子でした。
ゴキブリ目(Blattodea)の1種
人家の近くにいてあまりきれいではなさそうだったので、触るのはやめました。
肝心のライトトラップは村の近くの山の斜面になっているところでやります。
近くに家畜の牛のふんが沢山落ちていたので、虫が集まるのを待つ間にみんなでウンチをほじくりまわしていると、
なかなか渋い色の糞虫が見つかりました。
家畜の牛糞から見つかった
コガネムシ上科(Scarabaeoidea)の1種
牛糞をほじくりまわす僕たちが面白かったのか、ライトトラップについてきていた村のこどもが一緒になって糞をほじくりまわし、見つけた糞虫をたくさん持ってきてくれます。
糞虫だけでなくいろんな甲虫を見つけてきてくれたのですが、懐中電灯も持たずに裸眼で探し出してくるので、さすがだなあと妙に感心しました。
肝心のライトトラップは大型甲虫が飛んでくる!ということはありませんでしたが、可愛らしい小昆虫やガを見ることが出来てそれなりに満足しました。
可愛い模様の
コガネムシ上科
コカブトムシ属(Eophileurus)?の1種
スズメガ科(Sphingidae)の1種(?)
スズメガ科の1種(?)
ヒトリガ科(Arctiidae)の1種
日本にも生息している、アカスジシロコケガ(Cyana hamata)に似ています。
バッタ科(Acrididae)の1種
カマキリ目(Mantodea)の1種
村に帰り、道中のマーケットで買った卵とミゴレンで簡単な夕食を作ってもらい
それを食べてから宿へと戻りました。
村で食べた夕食。ミゴレンと目玉焼きに白米
ライトトラップではギラファを見ることはできませんでしたが、明日は出会えると信じて就寝します………zzz
ティモール島2日目は村の近くでひたすら昆虫を探すことになっています。
お世話になっている村は標高1200m程度の場所にあり、そばには谷があるので起伏がかなり激しい場所です。
村への道中、いい景色だったのでパシャリ
この道中で撮った写真を見てもそこそこ標高が高そうなのが分かりますよね。
村は電気が通ってないようで、
E氏が
traditional houseと呼んでいた茅葺きの小屋のような建物もありました。
小屋の中には囲炉裏のような物があるので料理をするのでしょうか?
くすぶった囲炉裏の周りでは犬が休んでいました。
traditional house
村の近くにはまばらに木が生えていて草原になっている斜面があるので、今日はそこをメインに採集を行うことに。
村を出てすぐ行くと広大な斜面を見下せる場所に出ます。
ここから下を眺めると、すでに何匹か蝶が飛んでいる様子が目に入りました。
しかもそれはじょえるの目的としている蝶だったようで、早速彼は走って行ってしまいました。
僕を含む他の三人はそこまで蝶に情熱がないので、とりあえず下りながら甲虫を探します。
するとE氏が何かを見つけたようで呼ばれて行ってみると、手にはタマムシが!
僕たちも必死になってその木をスウィーピングしていると、見事に採集できました。
タマムシ科(Buprestoidea)の1種
そのまま追加を得ようと同じ気をガサガサしていると、僕の網に巨大な枝のような物が引っ掛かりました。
いや、、、枝のような昆虫が引っ掛かっていたのです。
長竿をたたんで近くで見てみると、そいつは余りにも巨大なナナフシでした。
ナナフシ目(Phasmatodea)の1種
僕の顔より大きい…
これってテレビとかで見るやつでしょ!と興奮を隠し切れずに二人を呼ぶと二人も大興奮。
顔よりでけぇ…!とか言いながら写真を撮りました。
日本のナナフシはちょっと雑に扱うと足がもげたり体が潰れてしまうくらいの印象ですが、このナナフシは体も太く固いからすごいです。
流石に標本に出来る大きさじゃないのでそのまま逃がしましたが、実物を日本にいるみんなに見せたかったなあ〜とちょっと残念。
流石に顔より大きいタッパーなんて持ってないしね…
やっぱ南国ってすごいです…
いきなりティモールの洗礼を受けた形になり、期待感がダダ上がりです。
その後もE氏に案内されるまま斜面を下りていく途中、まばらに生えている木から数種類のカミキリを採集しました。
nemophas属の1種
カミキリムシ科(Cerambycidae)の昆虫
やっと出会えた大型甲虫!やっぱりデカさって正義だなと思わされます。
大型甲虫に出会えたことで、ギラファへの期待も高まってきますね〜〜
しばらく斜面を下った先には小川があったのですが、なんと!E氏がそこにギラファのついている木があると教えてくれました。
ええ〜〜!!??
最大の目的であったティモールギラファをこの目で見ることができるのかと、ドキドキしながらその木の所まで行くと村人がさっそくギラファを発見してとってくれました。
こ、これがカクタンクワ………ギラファノコギリクワガタか〜〜!!
別段珍しいものでもないかのように普通に渡してくれたのでなんだか驚きです。
別に普通に居るものなのか???
とりあえず、僕も自分で見つけようと思い必死に目を凝らしていると、何やら怪しげな影が視界に。
ここはセミも多くいたので、半分疑いながらも長竿を伸ばしてつついて様子を見ます。
すると飛び立たないでつかまったままでいます。
そして、何度かつつくと角度がずれて明らかにクワガタの形をしたシルエットが見えたので確信しました。
ティモール島には大型のクワガタはティモールギラファしかいないので、間違えようがありません。
そして、村人にサポートしてもらいながらなんとか網におさめて手元に手繰り寄せ、念願のティモールギラファの採集に成功しました!
ティモールギラファ
やったぜ!
写真は無いですがこの木にはヒメカブト属(Xylotrupes)のカブトやnemophas属のカミキリもついていて、御神木といった感じです。
しばらくは3人でこの木を周辺で採集をしました。
採集したヒメカブト属
一通り楽しんだ後は、3人が散り散りになって思い思いに探します。
そういえば、ずっと姿を見ていないけどじょえるはどこへ行ったんだろう…………
僕は、牛糞が幾つか落ちている場所を見つけたので、昨日とは違う糞虫がいないか探していたのですが残念ながら新たな種は見つからず。
しかもすっかり二人と離れてしまったので完全に迷子になってしまいました。
丘の上に行けば周りを見渡せるし皆を見つけることができるだろうということで、高くなっている方へ向かうことにしたのですが人の気配がしない…
そのうちに昨日は見てない沢を発見し、そこでチョウが飛んでいるのを見たので採集しようと近づいて行ったときに悲劇が。
見事に石の上で足を滑らせて右の手の甲を強打、人生で感じた中で一番の衝撃と痛みを感じてその場で数分動けなくなってしまいました。
感覚的には完全に骨をやってしまった感じ。
とりあえず沢の水で冷やそうと思ったのですが結構な擦り傷もできてしまったので衛生的に不安でやめました。
もう今日の採集の意欲が完全にそがれてしまい、加入した保険を使って病院に行かなくてはいけない可能性さえ頭をよぎってきます。
深い絶望の中一人佇んでいると、遠くの方から人の声が聞こえてきました。
神が慈悲を与えてくれたのか!と歓喜してそちらへ向かうと、じょえる達が高い木に登ってチョウを採っている最中でした。
合流して僕がけがをしたことを告げるとじょえるが湿布を持っているというので1枚貰って自分で持ってきていたテーピングでぐるぐる巻きにしてとりあえず固定をすることにしました。
その間にもみるみる腫れてくる右手。
まだティモール2日目なのにと、内心泣きたい気持ちになりながらも昼食を食べに村へ一度引き返します。
村への途中で休憩する村人たち
村に戻った後はコーヒーをごちそうになりました。
コーヒー
このコーヒー、お湯にコーヒーの粉末を溶かしたものなのですが砂糖をかなり入れているのかとても甘いのです。
まさにマレーシアで村人にごちそうされた紅茶のような甘さで、いかにも東南アジアって感じです。
負傷で傷を負った心に甘さが染み渡りますね〜〜
すると、E氏が奥から三角紙に包まれた何かを持ってきました。
開けてみると、なんとヒゲナガゾウムシが!!
E氏の持ってきたヒゲナガゾウムシ科(Anthribidae)の1種
去年採集した個体でラベル情報が不完全なのが残念でしたが、不思議と僕以外あまり興味を示してなかったので頂戴しました。
(もしかして遠慮していた…?だとしたらゴメンナサイ)
さらに、村人の一人がアカギカメムシ(Cantao ocellatus)を大量にとってきたのでその場所を案内してもらうことに。
jpg
葉上の
アカギカメムシと、その群れ
あたりの木には数十匹のアカギカメムシがついていてすごい光景になっていました。
日本で見られる
アカギカメムシは肩のトゲがあまり目立たないらしいのですが、
ティモール島の個体はしっかりとトゲがあり、実際捕まえるときも肩を持つと指に刺さって痛いくらいでした。
アップの写真
アカギカメムシの木の近くには小川があったので、
ミズスマシが大好きな僕は探してみることにします。
するとさっそく昆虫を発見。
ツチカメムシ科(Cydnidae)でしょうか?
そして体長10ミリ程のミズスマシも発見。