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蛾屋修行 其の陸


(21-22.Y.2019)


参加者 : みみずく








お久しぶりです。みみずくです。。

季節はすっかり過ぎ、初めて高尾でシンジュサンと邂逅してからほぼ1年が過ぎました。

気温もだいぶ高くなってきたため、丁度よい頃合いかと思い、今回も様々な蛾に出会うために高尾へと行ってまいりました。

今回のターゲットは、各種スズメがやオオミズアオ、シンジュサンも見られれば良いな。

現地に到着し、登山道のベンチで休憩。19時を回っても中々暗くならないですね。

日が沈んでから、毎度のことながら登山道を行ったり来たりして外灯に飛来した昆虫を観察していきます。

まずは甲虫から。



夏の常連、ヒゲナガカミキリ。実家のような安心感。



オオゾウムシも、それなりに個体数は多いです。

ミヤマクワガタももう出ていると思ったのですが、今回は出会えず。蛾が主目的のため真面目に探していなかったとはいえ、ちょっと寂しい・・

結局クワガタムシは、普通サイズのコクワガタを見ただけでした。




気を取り直して、蛾を見ていきます。


ウスキツバメエダシャク Ourapteryx nivea Butler, 1884

幼虫はブナ科、ニレ科、マメ科、モチノキ科の樹種の葉を食べます。成虫は5月頃から10月くらいまで観察でき、個体数も多く夜の高尾ではほぼ必ずと言って良いほど目にします。


ゴマフキエダシャクAngerona nigrisparsa Butler, 1879

幼虫はブナ科、ニレ科、トチノキ科、マメ科など、こちらも広食性のようです。成虫は9月頃まで観察できます。鮮やかな黄色い翅がとても綺麗だと思います。


ミドリリンガ Clethrophora distincta Leech, 1889

幼虫の食樹は、ブナ科コナラ属。絵具で塗ったような質感が良いですね。

登山道を行ったり来たりしていると、斜面の下の方で何かがガサガサと動く音がしました。

アナグマか何かだろうかと目をやると、なんとオオミズアオでした。

斜面を下って確保!!


オオミズアオActias aliena aliena Butler, 1879

後翅が大きく欠けています。鳥にでも襲われたのでしょうか。

ビークマーク(鳥についばまれた後)の付いたいわゆる不完品を見ていると、残念な気持ちと同時によく逃げ切ったなと感心するものです。

そういえば最近、科学誌『Science Advances』に発表された研究によると、アフリカ原産のヤママユ科であるアフリカオナガミズアオは、自らの後翅から伸びる長い突起(尾状突起)を駆使して、天敵であるコウモリからの捕食を免れているとのことです。

コウモリは反響定位(エコーロケーション)の能力を持っており、それにより動く獲物の位置を把握することは有名ですが、アフリカオナガミズアオの長い尾状突起が、コウモリの反響定位の音波をそらすのに役立っているそうです。

つまり、反響定位の音波をそらすことで、コウモリの狙いを急所から尾状突起へと狂わせて、致命傷を避けているそうです。

実験では、人工的に尾状突起の長さを変えてみたところ、後翅と尾状突起が長くなるほど、蛾はコウモリから逃げのびやすくなる傾向があったそうです。

オオミズアオの尾状突起も、もしかしたら似たような機能があるかもしれませんね。

オオミズアオの幼虫の植樹は幅広く、バラ科、ブナ科、カバノキ科など多くの樹種の葉を食べる広食性の種です。そのため比較的都会でも普通に見られます。

従って、日本産ヤママユ科の中では最も出会いやすい種と言えるでしょう。

よく似た種でオナガミズアオという種もいますが、こちらはハンノキやヤシャブシなどハンノキ属のみをエサとするため、分布はそれらの樹種がまとまって自生した場所に限られます。

オオミズアオとオナガミズアオの判別については、昆研ブログの方でいーぐる先輩がかなり詳細にまとめていますので、興味のある方はご覧になられると良いかと思います。

歩き疲れたこともあって、外灯ルッキングを一旦やめて、バズーカを用いてライトトラップを始めます。

さっそく小型の蛾が沢山集まってきます。天気も曇りで、好条件でした。

ひときわ大きな羽音がした方を見ると、オオミズアオが飛来したところでした。





今回の採集では、捕獲しなかった個体も含めて二桁は確認しましたが、欠けのない個体は1個体のみでした。

ここからはスズメガが多く飛来しました。


クルマスズメAmpelophaga rubiginosa rubiginosa Bremer & Grey, 1853

幼虫の植樹は、ツタ、ノブドウ、エビヅルなどのブドウ科。体の中央を走る白線が目印です。


クチバスズメ Marumba sperchius sperchius Ménétriès, 1857


幼虫の植樹はクリ、クヌギ、コナラ、アラカシ、シラカシなど。落ち着いた色合いで格好良いです。



こちらも同じくクチバスズメなのですが、なんと脚が6本全て欠損していました・・・

外敵に襲われたときに負った後天的なものなのか、それとも発生の過程で生じた突然変異によるものなのか・・?

いずれにせよ、こんな状態でよく飛来出来たものです。スズメガは蛾類の中でも飛行に特化した形態であるゆえ、脚の欠損は実は飛行の上ではたいした問題ではない可能性もありますね。


フトオビホソバスズメAmbulyx japonica japonica Rothschild, 1894

フトオビ!!高尾で見たのは初めてです。最後に観たのは2年前の奥多摩なので久しぶりだ・・

クルマやクチバは盛夏まで成虫が活動しますが、フトオビは晩春から初夏にかけてが成虫を見られる期間となります。

シャープで戦闘機のようなフォルムがたまらなく格好良いです!!

格好良さなら日本一のスズメガだと個人的に思っています。

幼虫はカバノキ科のクマシデの葉を食べます。

スズメガはこの他には、モモスズメが複数飛来しました。

昨年にはエゾスズメも観察しており、本格的にスズメガシーズン到来ですね。

ちなみに、カトカラ属も飛来していました。



現地では中々後翅を見せてくれず、展翅してから種同定することに。


フシキキシタバ Catocala separans Leech, 1889

過去には珍品扱いされていたようですが、最近はそうでもなくなってきているらしいです。生態が少しずつ判明して探しやすくなったのでしょう。

後翅の黒帯の幅が狭く、橙黄色部が目立つこと、よく似たマメキシタバよりは大きいこと、前翅の斑紋などからフシキキシタバと判定しました。

幼虫はクヌギやアベマキの葉を食べ、成虫は樹液に集まります。

今回は曇りという好条件もあってか、色々な蛾に出会う事が出来ました。

これからまた忙しい日々が続きますが、機会を見てまた蛾を求めて野外に出かけたいです。





それでは!









筆 みみずく





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