冬も間近な時期に現れる大型蛾。
やままゆの超人気種 ウスタビガ !!
いろいろなやままゆを観察してきましたが、
ウスタビガはいまいち飛来のしかたがわかりません。
一気に飛ぶ期間がかなりシビアなようです。
AM4:00に自宅を出発。
車でポイントへ移動します。
数年前にウスタビガの空繭を見つけて以来、よく通っている場所です。
標高は110-140mなので、山地に比べると発生は遅いです。
早速街灯を見ると ・ ・ ・
ウスタビガ
いました!
黄色の濃い個体で、とてもきれい!
擦れも少なく、新鮮な個体です。
周囲にもたくさん飛来していました。
落ち葉のような色合いと、特徴的な翅型。
このフォルムに魅せられた人は数多いるはず!
地色の色彩、模様の濃淡、眼状紋の大きさや形など、
よく見ると非常に幅広い変異があります。
特に♂の地色の変異は豊富で、黄色から赤みの強い個体まで様々。
黒化型などの顕著な変異も観察することができます。
街灯にもペタペタくっついていました。
この1本の街灯周りに飛来したウスタビガを集めてみると ・ ・ ・
! ! ! !
寒冷地では黒みを帯びてきますが、低標高地では黄色みの強い個体も混ざってきます。
色彩のバラエティは低標高地のほうが多いかもしれません。
別の街灯にも多数!
ウスタビガは、日を選んで飛ぶのではなく、羽化した日に飛ぶのかなと思っています。
一斉に羽化した日の夜に、多数観察できるのかもしれません。
最も集まりが良いのは街灯直下ですが、少し離れた場所に飛来する個体もいます。
止まる場所もいろいろ。
緑の葉に止まっていると、コントラストがとてもきれい。
そして、裏面も美しい ・ ・ ・ 。
今回は、非常に条件の良い日だったようで、多数の個体を観察することができました。
様々な色彩の個体を見ることができ、大満足でした!
・ ・ ・ と、ここまででは、例年通り。
ウスタビの生態の一端を垣間見るべく、今年はがんばりました。
ウスタビの発生動態を探るためには、♂の観察が指標になると思います。
飼育するとわかりますが、♂は羽化後すぐに飛び立つのに対し、♀は羽化場所に留まりコーリングを開始します。
♀が飛び立つのは、産卵場所を探すとき、数日のコーリングでも♂が飛来しないときが多いです。
♂の飛来を観察するために、AM4:00〜の観察を継続しました。
ウスタビガ
( 2016.11.17 埼玉県 alt.109 m )
このポイントで観察を開始したのは11/17 〜。
毎年、この場所では11月前半くらいから発生が始まります。
今年もすでに発生が始まっていたようです。
ウスタビガ
( 2016.11.19 東京都 alt.133 m )
♂をメインに観察しましたが、♀もちらほら観察できました。
♂ほど目を惹く色彩変異はありませんが、模様の濃淡、眼状紋の形状、
翅の大きさなどに注目すると、意外に変異が多いことがわかります。
ウスタビガ
( 2016.11.21 東京都 alt.118 m )
ウスタビガの飛び方は蛾のそれとは思えません。
ものすごい推進力です。
ウスタビガの学名は Rhodinia fugax
ラテン語で "fugax" は 「速い、一瞬の」 等の意ですが、
この飛行行動から名付けられたのかもしれません。
ウスタビガ
( 2016.11.21 東京都 alt.133 m )
11/21もまあまあ集まりが良かったです。
擦れの少ないきれいな個体を観察できました。
ウスタビガ
( 2016.11.23 東京都 alt.133 m )
ハグルマヤママユを彷彿とさせる、今季一番の黄色い♂。
この日は風がかなり強かったのですが、しっかり飛来していました。
ウスタビガ
( 2016.11.23 東京都 alt.133 m )
♀は♂に比べると一回り大きく、遠目に見ても迫力があります。
ウスタビガ
( 2016.11.23 東京都 alt.134 m )
強風で枯れ葉が散ってしまったため、樹上高くに止まっている個体も、すぐに見つけられました。
この高さ、枯れ葉が残っていたら絶対に見つけられなかったです。。。
ウスタビガ
( 2016.11.23 東京都 alt.133 m )
落ち葉の上に、ウスタビガのペアがいます。
♂と♀で色彩が大きく異なりますが、落ち葉色という点は一緒です!
この翌日、関東では稀な11月の積雪となりました。
ウスタビガ
( 2016.12.1 埼玉県 alt.109 m )
今季のラスト個体は12/1に観察した個体になりました。
12月に入っても、大型蛾が観察できるのは非常におもしろいです。
今年の、このポイントでのウスタビガの発生をグラフにまとめました。
「気温」 は採集時の気温、
「最高気温」 は観察した日の前日の最高気温を示しています。
今回観察した期間では、11/18 がピークでした。
その後2回ほど小ピークがありますが、いずれのピークも、前日の最高気温が大きく影響しているようです。
夜間の気温が低くても、風が強くても、飛ぶときは飛んでいます。
♀の飛来が♂のピークのあとに来るのもおもしろいですね。
早朝4時からの連続観察は、結構キツイものがありましたが、おもしろいデータが取れたと思います。
何よりの成果は、ウスタビガの多彩な変異を見れたこと!
来年は、更なるバラエティを見てみたいものです!