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奥多摩ひとり鱗翅の会

-妖美なる月の女神と最美の煌めき-
(14-15.X.2016)


参加者:がしゅん





ミヤマカラスアゲハ。

最美の輝きを持つこのチョウを、アゲハ好きとしては見逃すわけにはいきません。



より美しいとされる春型は5月頃に出てくるのですが、5月は大忙し!

GWはほかの虫を採りに遠出したいし、土曜授業に兼部先の新歓にと、なかなか休みが空きません。

それでもなんとかこの土日が空いていたので他にメンバーを誘ってみたものの、
皆、なにかしら予定があってこられません。


独りは嫌だなぁ…でもミヤカラ見たいなぁ……。

しばし迷った結果……。





結論。

行こう。







5/14 16:30 奥多摩駅に到着。

蝶を採集するのに夕方に来るだと?なめているのか?

そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではないのです。
むしろ逆。やる気に満ち溢れています。

都内でミヤカラといえば奥多摩が安定して見られる場所として有名です。

しかし、ミヤカラ春型が現れる5月は登山者も多く、奥多摩駅発の朝のバスはもう超満員となります。

ミヤカラは見たいけど、あの超満員のバスには乗りたくないなぁ。。。

そう思っていたとき、部屋の一角に置いてあったHIDハンディライト、通称バズーカを見て思いつきました。





朝のバスが嫌なら夕方のバスに乗ればいいじゃない。





というわけで前日入りして灯火採集です。

他に乗客のいないバスに30分揺られて目的地最寄りのバス停まで行き、
日が暮れる前に事前にチェックしておいたライトトラップ設置候補地2つを下見。

場所を決め、ゆっくりと準備して19:00に点灯しました。



今日は1灯のみです。2灯持ってこようと思ったのですが重いのでやめました。



今夜の狙いはオオミズアオとホソバ系のスズメガ。
出遅れたエゾヨツメやイボタガ、気の早いシンジュサンなんかもいたらいいな
とは思いますが期待はしていません。あとは外道として各種ノメイガとか。

今回の灯火はあくまでオマケ。



点灯後は街灯巡りへ。

気温はTシャツに薄い長袖パーカーを羽織って涼しく感じるくらいですが
気になるのは、夜にも関わらず足元にできた自身の影。


月がとってもきれいです。

上弦の月、天気は雲ひとつない晴れでございます。


予報では夜間は曇りだったので期待していたのですが……。

若干がっかりしつつふらふらしていると、一際明るい街灯が。

虫の舞いも悪くなく、ノメイガでも止まってないかなぁ…と見上げていると、





ババババババババ





なんて音が聞こえてきそうな高速飛翔物体が飛来。


・・・・・・

とまった!



!?!?!?

フトオビホソバスズメ



かっこいい!!

シャープな翅形がとてもかっこいいと思います。

特別珍しいわけでもないようですが、ホソバ系のスズメガを見るのは初めて!

さらに、図鑑で標本写真しか見たことなかったので知らなかったのですが、



腹側が橙色で、脚の付け根に白い斑がありオシャレですね。

かわいい。



しばし堪能した後、街灯を確認しつつライトトラップの場所までもどるも、街灯には特に良い虫は無し。



ライトトラップの場所まで戻ると、こちらにもフトオビホソバスズメが。



他にも

カゲロウの仲間

シロフアオヨトウ



がいましたが、光量が少ないのか、月が明るすぎるのか、これ以外に飛来がありません。

21時頃にライトの電池が切れ、入れ替えて再点灯すると、もう1頭フトオビホソバスズメが。



この子は後翅も見せてくれました。


光の照射の方向を微調整し、再び街灯巡りへ。

しばらくこれといった虫は見当たらなかったのですが、
22時半頃にもなると、道路脇にようやくあの虫が妖しく浮かび上がりました。

オオミズアオ



都市部でも見られる普通種ですが、闇に浮かぶ独特の淡い水色はとても美しく。

どこかスピリチュアルで異質な雰囲気を漂わせます。

さらにこの個体を愛でているうちにさらにもう1頭飛来し、
いよいよこれからオオミズアオの時間が始まるのだな、と感じました。

その後も、



道のど真ん中で発見。遠目にみても目立ちます。







オオミズアオの出現にテンションを上げつつ、電池替えのため22:45頃にライトトラップに戻ると、
明らかに今までより虫の飛来が増加していました。

ちょうど月が山の影に隠れたからか、照射角度の調整が良かったのか。

とにかく、気になる虫をカメラに収めるのに忙しくなりました。

ゾウムシの仲間

     

フトスジモンヒトリ

ハガタナミシャク

シラオビアカガネヨトウ

ハサミツノカメムシ

シャチホコガ

クロキシタアツバ



さらに、23時前にはオオミズアオが飛来。

オオミズアオ

この個体、後翅の眼状紋がオナガミズアオっぽかったので、おや?と思ったのですが、
その他にオナガっぽい特徴がないのでおそらくオオでしょう。

その後、日が変わるころまで街灯巡りとライトトラップを続け、街灯で数頭のオオミズアオを見た以外、
特に目新しい虫も現れないので本命のミヤカラ採集に備えて就寝しました。


Zzz...







朝6:00起床。

こんなに早く起きる必要は無かったのですが、寒さで目が覚めてしまいました。

まだ眠いですが、周りはもう明るくなってるし二度寝もできん……。

諦めて寝袋をたたみ本命のミヤカラポイントへ。



曇り空が気になりますが、はたしてどうなるか……。

不安を抱きつつ歩いていると、道路脇に夜に取り残されたオオミズアオを発見。



街灯に残っている蛾がいないか確認しながら歩き、ポイントに到着したのは7:30頃。

有名ポイントなので、この時期、採集者がたくさんいるのですが、
始発バスに乗ってもこの時間には、ここまでたどり着けないので文句なしの一番乗りです。

もっとも、こんなに早く来たところで気温が上がるまで特にすることもないのですが。。。

暇なので水場の確認をしつつ、通りすがりのタヌキに嫌われたり、
曇天に舞う鳶をぼんやり見上げたりなどしておりました。







******





朝食のパンを食べつつぼーっとしているうちに時刻は9時すぎ。

雲に覆われていた太陽もその姿を見せ始め、陽光が差し始めると同時に気温がどんどん上がっていきます。



キタキタキタ……



天気が良くなり俄然モチベーションが上がります。

蝶も飛び始めました。

トラフシジミ

そして9:30頃には黒い蝶が活発に活動をはじめました。

オナガアゲハ



さらに、続々と同業者の方々も現れ始めました。

先ほどまで、水場から水場へとふらふらと行ったり来たりしていたのですが、
そんな風にしているうちに後からやってきた同業者の方々が番人のごとく各水場に張り付き始めました。

いかん!これは出遅れてしまう!(←1番乗りした人)

ふらふらと水場を渡り歩くのをやめ、重い荷物を置いてきた水場へ戻ると新たな採集者が。

何やら水場へカメラを向けています。

あ、今、カメラをしまって網を振りぬきました。

網の中には…あ、あれはミヤマカラスアゲハです!!すごい!!





・・・・・・





出遅れました。(←1番乗りした人)



目をつけていた水場で、目の前で採られてしまったことにがっかりしつつ、
次は逃がさんと水場の前で次なるミヤカラの飛来を待ちます。





ひらひらと舞うオナガアゲハを眺めつつしばらく待っていると、
漆黒のオナガアゲハに交じり、青く煌めく高速飛翔する黒い蝶が視界に移りました。



キタ!



エイヤッ!



スカッ



・・・・・・



逃げられました。

速い……。


しかし、気温もだいぶ上がってきたからか、10時頃には定期的にミヤカラが通るようになりました。

ただ、定期的にやってくるようになったのは良いのですが、吸水する様子はなく、
なぜかジュラ棒の届かない高い位置を飛んで行ってしまうのです。

うぅぅ……。

なんてことだ…と軽く絶望していると、すぐ横を青い輝きが通り過ぎていきました。



逃してなるものか!



自分らしからぬ猛ダッシュでアタック!





・・・・・・





ミヤマカラスアゲハ

採れました!

尾状突起が欠けていますが、青緑色の鱗粉がよく発達した美しい個体です!

昨年は春型なのに後翅の青鱗粉の発達がイマイチな個体しか取れなかったのでうれしいです。



後翅裏の白帯もよく発達しています。

とりあえず採れたので安心したのですが、その後はせっかく目の前の
網が届く範囲に来たミヤカラをことごとく空振りする不始末。。。

完っっっ全にスキルが足りませんでした。

さらに良くないことに、11時頃にはミヤカラが高いところを飛び始めてしまい、もはや追加は絶望的。。。

もうだいぶ落胆してしまい、慰みに飛ぶのがゆっくりな蝶を採って遊びます。

オナガアゲハ

ミヤカラ採集の外道みたいな扱いをされる気がしますが、シャープでかっこいい蝶です。

サカハチチョウ

春の山でよく見られるかわいらしい蝶です。

キンモンガ

まるで蝶のような風貌ですが、これでも蛾。

アゲハモドキガ科の1種です。

日本には3種しかいないアゲハモドキガ科には本種とアゲハモドキに加えて
フジキオビがいるのですが、分布が局所的なため珍品扱いされています。

奥多摩にはフジキオビも生息しており、発生期もミヤカラと被るので密かに狙っていたのですが、こちらは採れませんでした。

(実は、谷の斜面に生えた木の梢の方で白っぽい蛾がふわふわ飛んでいるのを見て、
もしや???とは思ったのですが、街灯巡り用の5.4 m竿では届きませんでした……。)



とりやすい蝶で遊んでいると、青い輝きを放つ蝶が舞い降りました。

逃がさないよう慎重に網を振ります。

入った!!





あれ??なんか地味。。。

カラスアゲハ

ミヤマのつかないカラアゲ君でした。

翅の表に一際輝く鱗粉の帯がないこと、後翅裏に白帯がないことからミヤカラとは区別することができます。

ミヤカラの前ではくすんでしまいますが、美しいのは事実。初採集でもあったのでうれしいです。





カラアゲ君を三角紙に収めるとなぜか急にオナガアゲハの数が増えてきました。

時刻は11:20頃。この時間がオナガの活動ピークなのでしょうか。

あんまり乱舞しているので戯れに連続採集。

オナガアゲハ×2

このあとさらにオナガを網に入れて遊んでいたのですが、そんなことをしていたがために、
久しぶりに表れた通りすがりのミヤカラには逃げられ、ついでにオナガは逃げたり翅が折れたりとひどい体たらく……。

意味もなく虫で遊ぶのは良くないですね……。




反省して静かに蝶を待っていたのですが、30分ほどして正午近くなると、今度は蝶が全然飛ばなくなってしまいました。

今日はこれで終わりなのかな……。

各水場を守っていた同業者の方々も、見切りをつけたのか、次々にバス停方面へ帰っていきます。

同業者がいなくなったのを良いことに別の水場もみてみましたが、やはり蝶が飛んでません。

かろうじて吸水ではなくサンショウに産卵に来たオナガアゲハの♀は採集できました。

オナガアゲハ♀

後翅前縁に白い性標がないほか、♂に比べて後翅の赤斑が発達しています。



30分ほど歩き回りましたが、ミヤカラどころか蝶が全然飛んでおらず。

「疲れたし一応は採集できたしもう諦めて1時間早いバスで帰るか。。。」
と、荷物を取りにもとの水場へ戻りました。



そのとき。







きらり。







!!!!!!















     

ミヤマカラスアゲハ

やったー!!!

ちょうど水場に舞い降りたところをキャッチすることができました。

しかも完品!

今日最初に採った個体よりは派手さに欠けていますが、どこも欠けてません。

うれしいのぅ…うれしいのぅ……。

さらにうれしいことに、この個体を皮切りに、再びミヤマカラスアゲハがちらほらと見られるようになってきました。

ただ、やはりスキルが足りず、ぜんぜん網に入りませんでした。

それでも、1時間ほど粘ってようやく1頭追加できました。

     

ミヤマカラスアゲハ

なぜか後翅の微妙なところに穴が開いていますが。。。

この個体を採ったところでタイムアップ。

採集を切り上げて帰路につきました。








というわけで、独り奥多摩で蛾と蝶を楽しむ「奥多摩ひとり鱗翅の会」でした。

前夜祭たる灯火採集は、多くのオオミズアオを見ることができました。

オオミズアオはド普通種ゆえに特に狙って採集したことはなかったのですが、
狙いをつけて多数観察してみると、実は大きさや翅形(特に尾状突起)、模様や色合いに結構変異があるんですね……。

知りませんでした。ド普通種といえど注意して観察することは大切ですね。

↑この2個体だけでもサイズや翅の形に違いが見られます。
下の個体の方が上の個体に比べて小さく、全体的にスマートな印象を受けます。




本命のミヤカラ採集でも、複数のミヤカラが採集できて満足!

採集数が少ないですが、こちらも若干の個体変異を感じられた気がします。

ただ、今回は採るので精一杯になってしまい、生態写真を全然撮っていません……。

吸水中の写真くらい撮っておくべきでした。反省です。

次にミヤマカラスアゲハを採るときにはしっかり吸水シーンを収めたいと思います。

まずは夏型の集団吸水!

また夏に見に行きたいと思います!!























それではっ!





By がしゅん


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