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第56回東京農工大学 学園祭 大昆虫展

(7-9.XI.2014)

参加者: みんな


季節の巡りは早いもので暦の上では立冬を過ぎました

陽の光はどこか余所余所しい軟らかさを持って

落葉をうす紅に染めています

初めて訪れた六年前と変わらずに

構内は武蔵野の香りに包まれています


大学1年、2年と展示を行い

私たちの代は今回が最後。

それぞれの思いを持って展示を行いました




学園祭に向けては、一年間の成果を、各人また全員で協力しながら

展示内容として組み立ててゆきます。

またそれとは別に、鱗粉転写や標本作りなどの体験イベント

農工大産カブトムシの配布など

事前に準備することもたくさんあります。

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構内でのカブトムシ採集には、がしゅん、いえうが参加してくれました。

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カブトムシ配布は当初の予定より早くなくなってしまい

最終日にはお渡しできない状況になってしまい

楽しみにしていただいた方にはご迷惑おかけ致しました


2年生は学園祭を運営する立場にいるので、忙しいながらも昆研を手伝ってくれています。

1年生はパーカーデザインから立て看板作りまで、精力的にこなしてくれました。

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学園祭は金曜の午前中に会場準備を行い午後1時から開始

1年生が完成させた立て看板も、本館前の目立つ場所に設営完了

早く準備に来たかいがありましたね

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初日は午前中いっぱいでは準備が終わらず、午後まで掛ってしまいました

一般のお客さんは多くはないものの、学内の方が多く、

インドネシアからの留学生の方々と少しお話しできたのは楽しかったですね。



土曜日になり、新たにかっきー氏が箱を完成させ、少なかったカミキリなどの箱を補充して

ほぼ展示内容が完成。

土日共に天候はよくなかったものの、多くの来場者に恵まれました。

子どもたちも多く来てくれて、非常に活気あふれる展示会場となりました

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とりわけ人気であったのは「生体展示」と「標本教室・鱗粉転写」


生体展示では、子供たちに人気のカブトムシ、クワガタムシとして

ヘラクレスオオカブト(George)、パプアキンイロクワガタ(いーぐる)

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今日の農工大を作り上げた立役者、お蚕様(いえう)

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翅が癒着して飛ぶことが出来ないカミキリムシ:コブヤハズカミキリの類

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この時期に現れる、刺さない蜂:オオスズメバチの♂(荒川沖)

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など、普段は見られないような・触ることが出来ないような

珍しい昆虫と触れ合うことが出来、好評を博しました。

やはり、実際に生きている昆虫ほど魅力的なものはないでしょうね。

子供たちの反応は的を射ている所があって、参考にするところは大いにあると思います



標本教室は部員が1年間で採集した標本の一部を用い、

実際に部員が展足の指導を行いました。

小難しいことは抜きにして、ピンセットや針の扱い方など基本的なことを教えた後は

自主性に任せるようにします。小さい子供から大人の方まで、熱心に作成されていました。

鱗粉転写は同様、部員が採集した国内の蝶や、OBのA氏協力の下インドネシアやタイの蝶蛾を用い

しおりを作るというものでした。

好きな蝶を一匹選べるということで、嬉々として取り組んでいたのが印象的ですね。

此方の方が標本作りより簡単なので、小さい子でも容易に作れます。

12-15時頃が一番込み合い、人手が足りない状況となりましたが1年生、2年生の手伝いで

何とか対応することが出来ました

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本年は初めてポストカードの販売も行いました。

いーぐる、トシ、がしゅんが写真を提供してくれまして

多くを売り上げることが出来たようです。

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さて、ではそろそろ今年の標本展示の内容に移ります。

昨年は標本箱は多かったものの、模造紙が少なく展示室ががらんとした印象が否めませんでしたので

本年は模造紙が目立つような配置となりました。

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それでもやはり説明が少なかった部分が否めず、展示している甲虫の名前を聞かれるということが暫しありました。

見せる、というより、ご覧いただく、という考え方への移行が大切かと思われます。

展示内容もそうですが、その説明の準備ということも来年以降への課題かと思われました。



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農工大の昆虫は、構内で採集された昆虫の代表が展示されていました。

私たちより上の代が採集した物から1年生が採集したものまで幅広く扱われています。

1年生が作成してくれました。


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今年の合宿は伊豆大島でしたね。

教職の介護体験があり会長の私は行けませんでしたが、例年になく良いものになったのだなと判りました。

甲虫ではノコギリクワガタやカワラハンミョウが沢山いたようで、今回の展示でも変異を見ることが出来興味深かったですね。

鱗翅目では、たかも酢のスズメガをはじめ色々いたようです。

此方も1年生作品


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本年の沖縄で得られた昆虫です。

昨年は私も同行しましたが、夜間の長時間運転が非常に堪えたのを覚えています…

かっきー引率の下、地シス1年勢が頑張ったことが判りますね

「来年はオキマル採ります」と言っていた、みむさんは来年いかに…


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農工大は府中にあるため、高尾山までは30分程

表高尾から裏高尾まで、様々な顔を持つ場所であり

私たち3年も足繁く通いましたね。

一番の思い出は、裏高尾で初めて見つけたアオタマムシ。

誰も来ない場所で、初めて自分でポイントを見つける楽しみが判った瞬間でした。

この箱も1年生が作成してくれました。鞘翅から鱗翅まで色々入っています。


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奥多摩の昆虫です。

かっきーが採集したものになります。

同期やその周辺では彼ほど奥多摩に足繁く通ったものはおりませんで

その努力の結果、貴重な種類も多く含まれています。

昆虫研究会には奥多摩の調査を行う先輩方が多く

彼もまたその一人としてこれから先頑張ってゆくことでしょう。

獣医学科に所属しているため来年も彼は現役です。引き続き後輩を指導してもらいたいですね

(先輩だったのに、気付いたら後輩に、なんてことが無いよう勉強も頑張れ、かっきー)


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子供から大人まで、一番馴染みがあるのはカブトムシ、クワガタムシでしょう。

大学になって様々な種類を知るようになりましたが、やはり原点にはこのグループがあります

クワガタやカブトは大きさによって歯型など多様な変化があります。

滅多に見ることが出来ないような非常に大型の個体も展示されています。

ノコギリクワガタやミヤマクワガタといった有名な種類から

少しマニアックなルリクワガタ、ツヤハダクワガタなど、種類も多く

昨年採集された奄美・徳之島周辺のクワガタも展示されています。

いーぐる、かっきーが展示しました


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例年作成しているタマムシ箱。

本年は直前になってゾンネが並び替えてくれました。

お隣にはトシが集めた小箱で珍しいタマムシを展示しています。

やはりアオタマムシやヤマトタマムシといった大型種、

ハビロキンヘリタマムシ、エサキキンヘリタマムシなどが目を引きますが

日本にいる200余種のうち、大半がナガタマムシ、チビタマムシといった小型種なので

此方にも注目してみると面白いですよ。学内やその周辺に意外にも沢山います。


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「秋の昆虫といえば?」コブですね。

地域変異も大きいうえ、同所的に複数種類が混生している場合もあり

中間的な形質をもった個体が得られることも。

主にトシ、いーぐるが作ってくれたところに、私も少しだけ加えました。

9月になって本種のために関東甲信越、様々なところを廻りましたね。

人によって展足のやり方が異なってくるのも、3年間の面白みです。


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M2の荒川沖氏が作成した蜂の仲間を集めた箱、ハサミムシ、カマキリモドキを集めた箱です

ハチとアリは近縁で、どちらもたくさんの種類があるようです。

分類も非常に難解だそうで、ここまでやるには勉強が必要不可欠でしょうが

来年はDeerが引き継いでくれるでしょうか。

恥ずかしながら、ハサミムシが何目に属するのか判りませんでした。

革翅目というのですね。

沢山の種類があることが判り、非常に興味深い展示です。

カマキリモドキは時たまライトトラップなどで見つける機会がありますが、まじまじ見たことは在るようでないかも。


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小昆虫の権化、ゾンネ先生の力作です。

私たちが普段気にも留めないような昆虫を、彼は一から展足し、同定し、

この様に仕上げています。

芸術的に並べた箱の横には、カラー分けした種の説明書きも置いてありました。

最も実力があるのは彼かもしれませんね。

日本にもテントウムシ、ゾウムシの類はたくさんの種類が生息していて、

構内にも多数存在しています。

授業の合間合間に彼が採集していた光景が今でも思い浮かびます


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御存じ採集上手のトシが集めましたマイマイカブリです。

一般の来場者の方には一番馴染みがない昆虫だったようで

色々質問を受けましたが、興味深く映ったことは確かと思います。

日本全国津々浦々、北海道から鹿児島まで、分布している殆どの県の個体が

3箱の中に入っているとのこと。戦前の農工大(高等農林時代)に採集された個体もあります。

マイマイカブリも飛べなくなったことで、地域ごと色合いや大きさに変異が大きいことが知られています。

個人的には、1年次の晩夏、一緒に合宿免許で訪れた山形での採集が思い出されます。

これからの時期はこの種類を対象にして採集に行く機会が増えるでしょうが、

是非積極的に後輩指導をお願いしたいですね。


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いーぐる専門のヤママユ箱。

日本産のヤママユガがほぼ網羅されています。

秋に出現する種類が多いですが、春先から冬場まで、

一年を通して楽しみが尽きないグループです。

雌雄で活動時間が異なったり、限られた場所/時期に発生する種類も多く

個体変異や地域変異もあって奥が深いことが判ります。

群馬のクロウスタビは非常に楽しかったですね


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パプアキンイロクワガタはニューギニアに生息するクワガタで

分布域は広いものの、非常に限られた場所にしか生息していないようです。

アルファック山塊で見た本種は非常に美しかったですね

同地域でも色幅に変異がありますが、産地毎大分色合いが異なることが判ります

変異を集めると、宝石箱のようですね。

いーぐるが作ってくれました


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日本のスズメガと青い鱗翅目を集めた小箱です。

直前にいーぐるが作成しました。

部室にOBが残して行った標本に加え、彼が群馬で採集したムラサキシタバ

今年の春先に採集しに行ったオオシモフリスズメも。

あの時は沢山いましたね…夢に出そうでした。

いえう採集のミヤマカラス春型も展示されています

青という色合いには引きつけられるものがありますね

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日本の蝶を集めた箱です。

直前に作成しました。

春のギフチョウから初夏のゼフなど

主に夏場までに観察される蝶をまとめています

個人的には、ベニモン型のシロオビアゲハが好きです

また、かつて応昆の教授であったI氏の

1948年採集の蝶も入っています。

判りますか?



本年は、日本国内のみならず、国外でも活動を行うなど

ここ数年の昆虫研究会としては活動の幅が広がった年でもありました


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かっきーがマレーシアを訪れた際に得られた昆虫です。

他大学の方とご一緒させて頂いたり、色々な活動ができたそうです。

クワガタカブトの飼育をしていたものとしては馴染みの深い種類から

芥子粒程度の非常に珍しい種類まで、当地には生息していることが判ります。

実は初めての海外旅行だったそうですが、ほぼ1箇月マレーシアとインドネシアで生活したそうです。

この後には一緒にイリアンに行くことになりましたが、

中々驚かされる事が多かったです、良い意味でも、悪い意味でも。

今となっては良い思い出ですが笑


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ぞんね・いーぐると共に訪れたイリアンで得られた甲虫です。

二人が頑張って仕上げてくれました。

非常に小さな種類から、大きな種類まで多岐にわたっていますね。

色々トラブルに見舞われましたが、それがあってこそ海外です。

月齢の影響もあって、3月の方が甲虫の数は多かったように思われます。

私にとっても、一番大きな旅行であったことは間違いなく

今でもメニ村にいる夢を、度々見ます。

現地の方との触れ合いが、何よりも印象的でした。


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イリアンで私たちが出会った鱗翅目です。

平地から山地まで様々な種類に出会うことが出来ました。

やはり半年違うと、同じ場所でも種類や数が異なることがよくわかり

一回でなく、複数回訪れることの重要性を体感した気がしました

この地域で代表的なトリバネアゲハにも全種に出会うことが出来

非常に感動したのを今でも覚えています。

天使の芳香、そして初めて蝶と目があった、その瞬間を

私は決して忘れることはないでしょう。


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今回の旅で出会ったいくらかの種類は

インドネシアや他の国々にまたがって生息範囲を持つことが知られています。

昨年訪れたバリ島で出会ったアオネアゲハが属し

イリアンでであったヘリボシアオネアゲハ、オオルリアゲハも属するアキリデスについて、

また平地から山地まで分布し、島ごと地域変異が大きいメガネトリバネアゲハの仲間について、

自分なりに分布拡大について仮説をまとめ、展示を行いました。

中には交雑個体や変異個体も含まれています。




以上が学園祭で私たちが展示した内容になります

恐らく最後の1週間は徹夜した人も居るのでは、という熱の入り方でした

展示や説明を書いてくれた皆さん、有難う御座いました

お疲れ様でした。


3日間は長いようで短く、瞬く間に過ぎ去ってしまった、

その様に今となっては感じます




学園祭の展示はお陰様で無事終了致しました。

これをもって、私たちの代は獣医学科のかっきーを除き引退という形になります。


この3年間で様々な個所を訪れたこと、そこで様々な昆虫に出会えたことが

今となっては良い思い出です。

対象は違えど、皆で共有しあえた時間というものは何にも代えがたいものであるように思われます。


採集をしていると、どうしても珍しいもの(珠玉の個体)などを主張したくなってしまいますが

縦令人には判らずとも、私には一匹一匹に思い出があって、順序を付けることはできないと

最近感じるようになりました。

引退しても、変わらず採集を続けているか、それは今の私には判りません。

1年後、5年後、10年後。私は、私たちはどのような立場にあるのか、其れは未だ見えません

しかし、この大学での三年間が、私たちに大きな作用をもたらしたことは

間違いのない事実であると思われます。


学生とは、社会のどの部分にも属しているものではありません。

また、属してはならないものであると考えます。

学生は思索の散歩者であります。青空の雲であります。

編輯者に成りきってはいけない。役人に成りきってはいけない。学者になりきってさえいけない。

老成の社会人になりきることは学生にとって、恐ろしい堕落であります。

地上の営みに於ては、何の誇るところが無くっても、

其の自由な高貴の憧れによって 時々は神と共にさえ住めるのです。

此の特権を自覚し給え。この特権を誇り給え。

何時迄も君に具有している特権ではないのだぞ。

ああ、それはほんの短い期間だ。

その期間をこそ大事になさい。

(『心の王者』-太宰治)



学園祭の後は

会長 Deer、会計 いえう 

新体制が始まります。新たに昆研を率いて頑張ってもらいたいと思います。

最後になりましたが、今まで支えて頂いた方々にこの場を借りて御礼申し上げます。

今後とも東京農工大学昆虫研究会を宜しくお願い致します。


一人のOBとして。


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by dazai39

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