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巨樹の樹洞の主たち
(30.VII.2014)
参加者:かっきー





前日までの試験の手応えは最悪で、今回は遠征の日程的に追試が受けられない。
ほぼ留年が避けられない状況となってしまったが、金曜からの遠征前にとりあえず奥多摩に行ってこよう。
主な狙いは樹洞に棲み、大型かつ独特の芳香を放つハナムグリとして有名なオオチャイロハナムグリ。
そして、関東で比較的容易に採集できるNecydalisとしては唯一未採集のクロホソコバネカミキリ。
さあ、虫たちに出会いに、いざブナの森へ。









青梅線とバスを乗り継いで登山口に到着。平日にも関わらず、超満員となったバスには驚かされた。
天気は快晴。山は僅かに靄が掛かっているが、採集に支障はないだろう。
ルリクワガタ属の採集で鍛えた脚で、ブナ帯まで急勾配をどんどん登る。









息を切らせながら巨樹の点在するエリアに辿り着くと、洞のある木を1本1本確認する。
オオチャイロがいるかどうかは、洞に頭を突っ込んで匂いを嗅げばすぐにわかる。


早速、強烈な甘い匂いに満ちたミズナラの巨木を発見。
懐中電灯で照らしてみると… いた!
内壁面に複数の個体が止まっているのが見える。
しかし、この洞は地上1.5mほどの高さの開口部から覗き込むか、
下に空いた小さな隙間から手を突っ込んで中を探ることしかできなそうだ。
上から覗き込んで目いっぱい手を伸ばしても、オオチャイロには届かない。
持参した網の枠は50pのみ。巨大な樹洞とはいえ、上から網を入れるのは不可能。
悩んだ末、近くに落ちていた長い枝に掴まらせて吊り上げる作戦に決定。
1頭目。……落下
他の個体も、枝が壁面に当たった衝撃で洞の底に落下。
落ちた個体は洞の底に溜まったフレークに潜っていく。
とりあえず1頭に狙いを絞り、なんとか枝に掴まらせることに成功。そのまま引き上げる。



遂にオオチャイロハナムグリを採集。飼育はしたことがあるが、野外で出会うのは格別だ。
この個体は♂で、鼻を近づけると独特の芳香を強く感じられる。
その後、下の隙間から手探りで何とか2♂を追加。うち、1♂はかなり小さ目の個体のようだ。



手で探れるのは洞の底面積の2割ほどであり、その部分は探し尽くした。
手の届かない範囲に他の個体が潜っていることは確認できているため、
帰りにもう一度見ることにして、ひとまずその場を去る。








樹洞や立ち枯れを見ながら標高を上げていくが、なかなか目当ての虫は現れない。
タンナサワフタギの立ち枯れには何故かニイジマトラカミキリが飛来した。奥多摩では2度目の遭遇だ。
























何気なく覗き込んだ、ブナの小さな樹洞。
ライトを当てると、カミキリのような影が見えた。



……あるカミキリの名が頭を過った。
いや、しかし、まさか。


すばやく、かつ慎重に狭い樹洞に手を突っ込み、その影を掴む。
樹洞から出した手には、その「まさか」が握られていた。














ヒゲブトハナカミキリ、通称パキピド。奥多摩では古い記録があるだけの大珍品だ。
震える手で撮影後、毒瓶に入れる。
何かの間違いではないかと、ギリギリ電波の入る携帯でネットを検索し、本種の姿を確認する。間違いない。
他にいないかとじっくり狭い樹洞を覗き込むが、珍品がそう簡単に追加できるはずもなかった。






再び樹洞を立ち枯れを見ながら標高を上げていく。
途中、ノリウツギやリョウブの花が咲くエリアを見つけ、掬ってみる。




まずはヨツスジハナカミキリ




ミヤマクロハナカミキリ




ハコネホソハナカミキリ、かな




ヤマトヨツスジハナカミキリ




コウヤホソハナカミキリ



その他、キヌツヤハナカミキリやマルガタハナカミキリ、ニョウホウホソハナカミキリなど。

花掬いもひと段落し、周囲の立ち枯れを見回ってみる。
とある立ち枯れの脇に立って虫を探していたとき、
何かがふっと視界の端を過り、構えていた網に飛び込むのが見えた。
ハチかな?と思い網を覗き込むと…





















ヒゲジロホソコバネカミキリ!
通称オダイ、関東ではかなり少ない虫で、奥多摩町では2012年にようやく記録された。
運が良ければ採れるかな、なんて思っていたが、まさかクロホソコバネより先に本種が採れるとは…
なんてツキの良い日なんだろう。この個体は上翅が褐色なので♂のようだ。
その後、近くの別の立ち枯れでは…














オダイ♀!!!
嘘だろう… こんなに都合の良い採集なんて、夢ではないだろうか。
本種はミズナラの部分枯れに来ると聞いたことがあるが、
この立ち枯れはオオホソコバネカミキリ(ソリダ)が集まりそうな大きな立ち枯れだった。
目線の高さくらい、画像中央部あたりにいた。






そろそろ帰ろうか、と思いつつ少しだけ移動し、オオチャイロがいないかとミズナラの洞を覗き込む。



オオチャイロ臭はしないなぁ……あれ??



まさかのオダイ♀、再び。
オダイは樹洞で見つかることもあると聞いてはいたが、本当にいた…
残念ながら右触角が完全に奇形だが、1頭目の♀よりも大きい。
今日はたまたま条件が良かったのか、それともこのあたりではオダイは他のネキよりも多いのだろうか。




もう満足だし、これ以上登るのもつらいので、立ち枯れや樹洞を見ながら下山することにする。
帰りは殆ど何も採れなかったが、最初にオオチャイロを採った木を覗き込むと…

いた。
今度は♀だといいな、と思いつつ採集を試みる。
また枝に掴まらせようとして失敗し、下の隙間から何とか採集。
…♀だ!!








あまりの成果に、帰路で何か事故があるんじゃないかと心配になったが、無事に下山。
過去20回ほどの奥多摩採集の中で、最高の成果となった。
留年などの些細なことはどうでもよくなり、奥多摩の自然に感謝しながら家路に就いた。

By かっきー


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