雲間の梓山にて
4. VII. 2014
主催者:Sさん 参加者:トシ
今年もやって来ました,虫屋の夏。
学年も三年になり,ムシ採ってる暇とかあるのか? なんて思っておりましたが・・・
そんな心配はどこへやら。なんやかんやとあちこち出かけております。
さて,今回はSさんのお誘いを受け,長野県の梓山へ。
いつかは行きたいと思いながら,なかなか縁のなかったお山です。
今の時期,ここで狙うべき筆頭といえばもちろん・・・アカムネハナカミキリ!!
毒虫じみた真っ赤な前胸,濡れたような漆黒の鞘羽,どこをとっても格好いい虫です。
かつて梓山ではかなりの個体数が見られたそうなのですが,行けば採れた時代は今は昔。
近頃はかなりの珍種と化してしまったようです。
まぁ本種がダメでも,クビアカハナやヒゲナガシラホシ,エサキキンヘリタマムシ等など
数えきれないほどのいい虫がここには居ます。
行けば何かは採れるだろう! そんな期待を抱きつつ,深夜の東京都を出発です!!
あ・・・あとヤツボシカミキリとハビロキンヘリタマムシ・・・
冗談でもいいから採れないかなぁ・・・なんて。
埼玉から高速に乗って3時間。
山梨県でインターを降り,下道で梓山へ向かいます。
途中のコンビニで小休止・・・かと思いきや。
マツノマダラカミキリ [Monochamus alternatus]
車を降りて直ぐ,Sさんがマツノマダラを発見!
普通種と言われつつ,なかなか見ること叶わなかったカミキリです。
ここでは毎回採れるから・・・と僕が頂いてしまいました。
ありがとうございますm(__)m
これに触発され周囲を探索してみると,案外様々な昆虫がいることに気づきます。
大方はよく見るメンツですが,駐車場の暗がりに見慣れぬカトカラ。
フシキキシタバ [Catocala separans]
ガはよく判らないのでSさんに渡すと,「なかなかの珍種だ!」と喜ばれていました。
別のコンビニへ移動し,灯火を巡っている最中,足下に嫌な感触・・・
恐る恐る確認してみると・・・
オオムラサキ [Sasakia charonda]
やっちゃった・・・
でも,オオムラサキが灯火に来ているところを見るのは初めてです。
さすがオオムラサキの里,山梨県なり。
・ ・ ・ ・ ・ ・
こうしてゆっくり移動しているうち,だんだん空が白み始めました。
アカムネハナは朝から狙えるカミキリです。
こんなことしている場合ではないと,急いでポイントまで向かいます。
レタス畑を抜け,山の中へ。
道を進むに連れ,針葉樹の中にハルニレが目立ち始めます。
ハビロキンヘリのご神木もこの辺りだそうです。
そうしてアカムネハナカミキリのポイントに到着!!
小さな広場にホストのクロツバラが点在しています。
近年は鹿が増え,背の低い木の多くは枯れてしまったとのこと。
昔よりは大分減ってしまったそうですが,それでも数十株のクロツバラが確認できます。
アカムネハナはこれらの葉上に静止していることが多いらしいです。
・・・さて,昨日飛来した個体がいないか,じっくり見て廻ります。
夜中に雨が降っていたのか葉はびしょ濡れですが,あまり本種の採集には関係ないそう。
ドキドキしながら歩いていると・・・
・・・うおお!!・・・ってあれ?
ジョウカイボン・・・
カミキリは見当たりませんが,この仲間だけは沢山います。
本当に紛らわしいです。
こうしてジョウカイやハムシに一喜一憂してるうち,何も採れないまま4時間が経過。
時刻は午前9時頃に・・・
日が射し,気温が上がると共に,にわかに虫の数も増え始めます。
ポツポツとモモグロハナ,ヌバタマなど,良いカミキリも出てきているようです。
また,同時に採集者の方も続々現れ,いつのまにやら総勢7名での採集に。
・ ・ ・ ・ ・ ・
周りの方と「採れませんねぇ・・・」なんて話していたところ,向こうから嬉しそうな声!
まさか・・・! 数名で駆け寄ってみると・・・
採れてるー!!
うっひゃーよく見えないけど格好いい!!
誰かひとりが採れると俄然やる気が出るものです。
それからすぐ,他の方がまた発見!
生態写真を撮られていたので,私も便乗させて頂きました。
飛ばないかハラハラしながら撮影・・・
アカムネハナカミキリ [Macropidonia ruficollis]
私なら怖くて直ぐに採ってしまう気がします。
撮影させて下さったIさんに感謝です。
ひとしきり観察し,次は僕もと気合を入れて探索再開。
さて奴らは何処に隠れているのか・・・
近づいてクロツバラを見る・・・居ない。
次は遠くでクロツバラを見る・・・・・・居ない。
つまりこの木には居な・・・アレッ!?
居るじゃん・・・なんで?
見たはずの場所に唐突に現れた感じ。嬉しいですが,不思議です。
しかし,なんとカッコイイことか・・・
というかやはり撮るまえに採ってしまいました。もはや本能ですね。
・・・それから程なく,別の場所でも追加!!
先程の個体はオスでしたが,こちらはメス。
メスが居たならそこは発生木の可能性が高い,とのことで,皆で待っていると・・・
おお。
おおお!?
あっちこっちから見つかります!!
他の皆さんも続々発見!
下草・樹の幹・葉の上など,いろんなところからひょっこり現れます。
結局この不思議な発生ラッシュは数十分のうちに終了しました。
が,しかし,その間に見られたアカムネハナの数は・・・なんと10頭近く!!
なかなかこんなことはないそうで,皆で大喜びです。
・ ・ ・ ・ ・ ・
さて,アカムネハナ採集にも満足した頃,時刻は午前11時に。
まだ空は晴れの範疇ですが,どうも雲行きが怪しげな感じ・・・
何か採れるとは思えませんが,折角の機会です。
少しだけでも樹冠を掬ってみましょう。
ハンノアオカミキリ [Eutetrapha chrysochloris]
何回か掬って,ようやく入ったのはハンノアオカミキリ。
綺麗な種ですが,南会津でしこたま見たせいかあまり嬉しくない・・・
他には毛虫やカメムシ,カイガラムシの類がわんさか。
やはりこの天気では厳しいのでしょうか。
・・・重い網を振るのにも疲れ,少し小さな木へ移動。
北側斜面で日当たりが悪いのが残念ですが,こっちなら楽に振れます。
ブンブンと樹冠で網を振り回し,すぐに回収。
エサキくらい入ってないかな・・・あ。
え?
ま,まじでか・・・
ハビロキンヘリタマムシ [Poecilonota nipponensis]
肩で途切れる濃い赤条,厚みのある体型,そして鞘羽を縁取る緑の帯。
間違いない・・・ハビロだ。
う,うれしい。しかし,全く現実感が湧かない。どうしよう。どうしよう。
取り敢えずSさんに報告。祝福されるもやはり現実感は湧かず。
夢見心地でもう一度同じ場所を掬うと,今度はヒゲナガシラホシが入りました。
ヒゲナガシラホシカミキリ [Eumecocera argyrosticta]
これで完全に気が抜け,あとはボケーッとしていた気がします。
その後,暫くして雨が降り出し,正午にはこの場を去りました。
さて,気を取り直して最後のポイントに向かいます。
次に訪れたのは・・・
山際の小さな林。
写真の4〜5メート程の木はハンノキです。
ここで狙うのはその名の通り,ハンノキカミキリ。
Sさん曰く,こちらも天気に余り関係なく採れるそう。
果たして本当に雨でも大丈夫なのか・・・
木の梢を見上げていると,怪しげな影!
さて,ジョウカイや否や。網をのぞき込むと・・・
ハンノキカミキリ [Cagosima sanguinolenta]
よしっ!! これまた実にエレガント!!
他には無い色合いのカミキリです。
樹冠部を飛んでいる個体はオスが多いそうで,これもやや小さめのオスでした。
・・・そしてこの後数個体を追加。
いつの間にやら小雨に加え,強い風も吹いてきました。
これでは流石にハンノキカミキリも飛びません。
名残を惜しみつつ,山を去ります。
かつて無いほどの素晴らしい成果。Sさん,ありがとうございます。
さすがは虫の山,梓山・・・でした。
By トシ
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