信州の初夏
〜水無月に残る雪と共に〜
(2.VI.2013)
参加者:Sさん、かっきー、dazai39
ふと気づくと
彼は自らを山に見止めた
英文和訳の教科書で
このような訳文があったかなかったかは
いまいち定かではありませぬが
(あるいは漱石の文か)
私の場合
これが恐ろしい現実として
如実に体現されているのであります
振り返ってみれば、五月中
一度も山へ行かなかった週はないわけであります
最終週も奥多摩を徘徊しまして
カモシカと遭遇したり
危うく行李がなくなりかけたり
崖近くの花に吸蜜に来ていたアゲハを狙いまして
崖を滑りかけ(初めて死を意識した?)
おまけに採り逃したりと
非常に御目出度き
採集をしていたのでございます
-この流れのまま
六月に突入するのか…
-ええ おそらくは。
そして水無月第一弾としまして
長野北部に行って参りました
狙いはユキグニコルリクワガタ
居ればギフチョウ
その様な感じです
今回は大学が土曜授業で
(本学では去年から節電のために時たま土曜に授業があります)
かっきー氏は五限まで授業があり
車を出して下さいますSさんも
土曜は午後からの方がご都合がよいそうで
西国分寺19時集合
そこからちょいと移動しまして
車に乗って長野方面へ
私は授業の都合上
本日休診でありまして
18時ごろ府中駅着、大学前の交差点を左折し
北府中駅へと歩んでまいります
奴のことですから
授業などてんで目もくれず
土曜から突っ込んでゆくものと予想していただけに
気がふれたのかしらん
などと沈思しながら
歩いておりますと
自転車のベルが聞こえます
…奴です
熱が冷めるはずがありません
炎焼しています
見た目はすでに何やらわからぬ容相
リュックに長竿が装着され
「クワガタの頭部を背負った狂人」
と形容するのが妥当でありませうか
自転車を止めた後、西国分寺へ移動
其の後Sさんと落ち合い
お宅に呼んでいただきまして
夕飯後ご一緒させていただきました
ご家族の皆様にはこの場を借りて御礼申し上げます
数時間後に飯能方面へ移動し
Sさん宅から自動車で長野県北部へと向かいます
途中サービスエリアにて採集
3,4時間ほどで現地到着
標高を上げるとちらほら雪が残っています
更に標高を稼ぎ、900mくらいまで上ると
地面にかなり雪が残っておりまして
新芽も丁度良い感じのものがあります
すこし車から降りて探索しますが
しまった
ライトを持ってき忘れた
というわけで私はお二人の採集を見守ることに
かっきー氏が突然叫びます
「いた!」
ユキグニか
「コブヤハズ」
地面にいたそうです
因みにライトで何しているかと申しますれば
新芽に潜り込んだままお休みの
ユキグニがおらんかということです
結局新芽自体は良い雰囲気でしたが
夜ともあって昆虫で発見かなったのは
コブヤハズのみ
喜々とする狂人(?)
かっきー氏の提案で
一度峠の頂上まで行って
新芽の状態を見ることに
300米程標高をあげてゆきますと
大地の残雪は月光にほの白く
明らかに先程の場所に比べ
雪解け・芽吹きの遅さが見受けられます
「緑なす繁縷は萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾の岡辺
日に溶けて淡雪流る 」
(『小諸なる古城のほとり』島崎藤村)
頂上手前で車を降り
再度散策していますと
どうも追い抜かしてゆく車の数が多い
新潟が近いからそちらへ行くのでしょうか
更に車で頂上過ぎまで向かうこととなり
さあ頂上だ
…なんじゃこりゃあ
道に車の大名行列
恐らく100米にわたって停車中の車が並んでいます
さすがに皆唖然としまして
これがまさか皆採集者であるならば
ここは一体どういったこととなるのだろう
かっきー氏が遠い目をしながら
「ここは有名産地だからある程度
同業者がいると思ったのだけれど」
薄明にトランクを開け
どうも網のようなものを確認されている方もおり
暗雲が立ち込めた感があります
しかし暁を過ぎ、曙にさしかかるころ
徐に複数台の車の扉があきまして
登山の格好をされた方々がお目覚めになった様子
実は多くの車は登山目的か
山から見える日の出、もしくは野鳥の
写真撮影にいらしていたようです
同業者がいることは否めませんが
当初の不安が晴れたこともあり
6時過ぎまで仮眠をとります
はい、朝です
寒いです、さすがに。
10度はあるかな
今日の予報は事前に好転しまして
曇り時々晴れとなっています
ユキグニ採集にはもってこいですね
かっきー氏はまだ就寝中ですが
外に出て様子を探ります
といっても私は今日が初新芽採集ですので
教えていただきながらの採集です
するとすぐにSさんが「採れました」
さっそく一匹目です
ユキグニコルリクワガタ
かっきー氏に知らせると
飛び出してきました
同じ場所をかっきー氏が漁り
数頭取れました
私は近くに良い新芽が無いか手探りで探しますが
いまいち当たりが出ません
もとに場所に戻って掬ってみますと
入りました
♀です
…瑠璃とはいえどあまりきれいでないね
足元を見ると♂が落ちています
さがさやると
どうも付いていたユキグニは
下に落ちてしまうらしく
うまく落ちると道路わきの溝に落ちているようです
実はかっきー氏がやたらとガサ入れするもんで
彼の周囲に落ちまくっているようなのです
その証拠に彼の足もとには
数頭の雌雄が…
しかし能々考えると
落としている数自体はもっと多いはずです
もったいないのかなあ
この後 竿が真っ二つに…
結局2時間もたてば
Sさんは10頭以上
かっきー氏も10頭前後
私は遅れて掬っていたので
結局6頭くらい
マガタマハンミョウ
かっきー氏が多く採集していました
この後歩いて標高を稼ぎ
途中から別れて(私だけ)
採集をします
良い感じの湖があり
湖面には雪が漂い幻想的
その中にヤマツツジが赤の彩りを添え
も少し季節が進めば
ミヤマカラスアゲハも飛んできそうです
現在はモンキチョウが飛んでいます
地面には越冬明けか、アオダイショウも
ちょうど良い感じで新芽が集結していて
日当たりも抜群
運が良いことに晴れてきまして
これは期待大です
ルッキングしていますと
幹を奴が歩いています
すこしつついてネットに入れます
綺麗だな〜
結構飛んでくるので
ここ一か所で10匹ほど取れました
まだ発生ピークではなかったようで
個体数は少ないですが綺麗です
二人は頂上方面に行っていたようですが
追加は4頭くらいだそうです
こちらで採集をすることとなり
主にルッキングで採集します
大分慣れてきたのでユキグニも目で見えるようになりました
一方かっきー氏はあまりふるわないようです
新芽を観察していますと
下の方からウスバシロほどの大きさで
若干速いチョウがやってきます
ネットインしてみると
ギフチョウ
しかも完品なり
ここは後で知ったのですが
6月に入ってもギフチョウを採ることができる
有名な採集地なのだそうです
2,3頭ユキグニを追加した後
私は坂を下ります
先にかっきー氏は降りてて
ユキグニ2頭とギフチョウ♂を採集していました
11時30分くらいに車に集合
その周囲で探索します
特に追加はありませんが
かっきー氏がギフの♀を採集しました
振り逃しそうでハラハラでしたが
採れてよかったですね
「あたたかき光はあれど
野に満つる香も知らず
浅くのみ春は霞みて
麦の色はつかに青し
旅人の群れはいくつか
畠中の道を急ぎぬ」
(『小諸なる古城のほとり』島崎藤村)
場所を移動し
スキー場近くに行きます
ここのユキグニは色が特徴的で翠であります
因みに一か所目は水色でありました
標高を稼ぎますが先程に比べて雪が残っておらず
1200米位でちょうど良い雰囲気
道沿いに歩くと
あたり一面銀世界に
しかしその反対側の池では
カエルが啼いています
同所でも日の当たり具合で
季節が若干ずれているようです
奥の道は日当たりががよくないせいか
ユキグニはさっぱり居りません
結局車を止めた横の木がよかったらしく
奴は♀を4頭とっておりました
しかし比較をするには♂がいないと意味がないらしく
浮かない表情のまま
やたらめったらガサ入れしています
私も採れないかと思い
車から少し離れた日当たりのよい場所で掬いますが
入るものはコメツキと
綺麗なハムシが殆ど
何度か掬っているうちに
1♀採れまして
其の後♂も1頭だけ取れました
しかし雲が出始め
其の後1時間は晴れない状況
しかし晴れれば飛ぶらしく
僅かな時間にSさんは採集されています
私とかっきー氏は
追加がないまま待ちぼうけしておりましたが
天もあわれと思ったか
3時すぎから晴れ始めました
すると確かにユキグニも飛び初めまして
4時過ぎるまでに6頭ぐらいは採れました。
晴れてはいますが4時以降は
ぴったり飛ばなくなりましたので
採集もここまでとし
後は少し上方の確認をした後
暮れ行けば浅間も見えず
歌哀し佐久の草笛、といったところか
千曲川いざよふ波を背にし
東京方面へと帰還の途に就きました
今回はユキグニの個体数自体は
予想ほど多くはなかったものの
ギフチョウも採集することができ
まれにみる充実した採集になりました
長時間車を運転していただき
採集に御同行いただいたSさん
またご家族の皆様には
この場を借りて 再度厚く御礼申し上げます
拝
ー追伸ー
まあ、予想がついて居られる方も
居るかもわかりませんが
奴はこの次の週も
行ってきました
同じ場所に。
実は土曜日はOB会で
二次会を途中で抜け出したのが
午後10時
私はこの度は行きませんでしたが
彼はまた「おきまりの格好」で
闇夜
北府中へと消えてゆきました
本当はチチブコルリを採集しにゆく予定だったようですが
時期が遅かったため
先週と同じ二か所で採集したようです
すると
二か所どちらでも
先週の3倍ほどの個体数が見られたらしく
大満足
との報告がやってまいりました
彼曰く
「ルリの展足には力を入れているからね
一匹当たり30分はかけるかな」
…今回採った個体数で計算すると
ほう、
気がふれていますね
気づいてみれば
彼は眼前に紺碧の大群を見止め
みづからが費やした時の流れと
遙かなる追憶のかなたに
深遠なる眼差しを
投げかけていたのである
完
by dazai39
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