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山陰の離島にて
(16-20.III.2013)
参加者 かっきー



和歌山を後にした筆者は18きっぷで10時間以上かけて米子へ。米子のネカフェで夜を明かし、翌朝早くから行動開始。
米子から境港までは列車に乗り、境港からバスで松江市の七類港へ。ここが隠岐への玄関口です。
七類港からフェリーに乗り込み、隠岐島後の西郷港へ渡りました。
隠岐では、島嶼としては唯一隠岐島後から記録されているニシコルリクワガタと、固有亜種であるオキマイマイカブリを狙います。



隠岐についたらまずレンタカーを借り、コルリが記録されている山に向かいます。
慣れない山道に苦戦しつつも標高を上げ、車を停めて探索開始です。
一応、このあたりで採れるはずなのですが、植生を見る限りとてもルリクワガタ属が生息しているとは思えません。
常緑広葉樹が多く、ルリクワガタ属の好みそうな落葉広葉樹もありますが、針葉樹まで生えています。
登山道を少し登り、登山道脇の斜面に落ちていた細枝を折ってみると…



で、出た!間違いなくニシコルリの幼虫です。
直径2cmもないような落ち枝で、表面にはルリクワガタ属特有の産卵痕も見つかりません。
とりあえず周囲の似たような枝を見つけては折る、という作業を繰り返します。
数本折ったところで、成虫♀が出てきました!



最初の幼虫も偶然というわけではなさそうです。
概ねどんな材から出てくるのか分かったので、落ち葉を掻き分けて良い状態の材を探します。
何本か連続で幼虫が出た後、とうとう成虫♂が採集できました!



その後も数本に1本の割合で成虫か幼虫が出てきます。個体数は決して少なくないと感じました。
しかし、出てくる成虫は何故か♀ばかり。最初の♂を出した後は5頭連続で♀が出てきたことには驚きました。
もちろん、♀ばかりでも採れないよりはマシですが、♂の交尾器形態を観察したいので♂の追加が欲しいところです。
結局この日は1♂6♀と幼虫数頭を採集して山を降り、温泉に入ってから車中泊しました。
実は筆者はこれまでに野外でコルリクワガタ種群の成虫採集に成功したことがないので、初日の成果としては十分でしょう。
(そんな状態でよく隠岐までコルリを狙いに来たなぁ…)


隠岐二日目。

早朝から車を走らせ、早速山に向かいます。
まずはオキマイマイカブリを狙って赤松の立ち枯れや倒木を崩してみますが、出てくるのはツヤヒサゴゴミムシダマシばかり。



そういえば隠岐って固有のゴミダマがいたような… 調べてみると「オキツヤヒサゴゴミムシダマシ」という固有種が記載されていまいた。
まさにこれがさっき採った虫。ゴミダマには詳しくないので本州のツヤヒサゴとの違いがわかりませんが、思いがけず固有種を採集できたのは嬉しいです。
その後も周辺でオキマイマイを探しつつ、出てきたオキツヤヒサゴを回収。
エグリゴミムシダマシの1種や隠岐固有亜種のオキヤコンオサムシ(下の画像)も採集できましたが、
このあたりにはオキマイマイはいないのか、それとも探す環境が間違っているのか、全く姿が見られませんでした。



昼ごろからは少し標高を下げ、斜面でコルリを探します。
昨日の場所と比べると乾燥しており、なかなか良い枝が見つかりませんが…
しばらく探して何とか1♀出てきました。が、ケースに収納する際に手が滑って落としてしまい、行方不明。ショック…
気を取り直して追加を狙うと、幼虫は採集できました。やはり湿度が高く、適度に朽ちた細枝にいるようです。



さらに周辺で探してみると、♂の成虫が採集できました。
さっき紛失した個体を含め、昨日から6頭連続で♀だったのでこの瞬間はかなり嬉しかったです。
今度は無くさないように慎重にケースに入れ、無事確保。
その後は数頭の幼虫を採集できましたが、成虫の追加はなし。
昨日の場所の方が明らかに個体数が多いと感じたので、昨日の場所のすぐそばに移動します。
山頂までは30分程度のようなので、とりあえず山頂まで登り、その後標高を下げて採集しました。



山頂からの眺め。隠岐最高峰だけあって、景色は良かったです。

やはりこの辺りは個体数が多いようで、2時間ほどで成虫ペアと10頭以上の幼虫が得られました。



採集地付近の環境。照葉樹が多いです。



1日半で成虫は二桁、幼虫は20頭以上得られたので、そこそこ満足して山を降りました。
もう少し粘ってもよかったのですが、落石もある細い林道を暗くなってから走るのは怖いので…
その後、真っ暗になるまで低地でオキマイマイカブリを探しましたが、かすりもせず。
オキマイマイは最終日の課題とします。

今日も温泉で疲れを癒してからスーパーで食料を入手し、車中泊。
温泉にあったマッサージ椅子が10分10円という超良心的な価格だったので、30分以上お世話になりました(笑)
明日の船で帰る予定ですが、天気予報を見ると明日は春の嵐ということで、朝の採集はともかくフェリーが出るのか心配です。

隠岐三日目。

早朝に起床すると大雨。採集する気も起きなかったので二度寝しました。
7時過ぎに起きると雨は小降りになっていたので、オキマイマイカブリを狙って行動開始。
本種は島の中には広く分布しており個体数も多いようですが、オサ堀りでの採集例を全く聞いたことがありません。
とりあえずトラップでの採集記録がある地点に向かうことにしました。
集落を越えて山道に入り、車を停めて赤松が点在する杉林に入っていきます。
このあたりで雨も風も強くなり、一旦車に戻ることも考えましたが時間がないのでカッパを着て決行。
作業道沿いに歩いていくと、高さ2mほどの傾いた松の立ち枯れを発見。
これにはいる可能性が高そうだと思い、まず体重をかけて倒してから上部を割ってみます。
すると、隙間から黒い大形甲虫が!



とうとうオキマイマイカブリを採集できました。
大雨の中、頑張った甲斐があった!
その後、周辺の松の立ち枯れを割ってみますが全く出てこない。
崖も崩してみますが出てくるのはゴミムシのみ。
レンタカー返却の時間までは少し余裕がありますが、悪天候の中の採集で疲弊したので切り上げました。
服も靴もびしょびしょ。靴の替えを持ってきていたのは正解でしたが、濡れた靴はさっぱり乾かずその後の旅行中ずっと袋に入れて持ち歩く羽目になりました…

レンタカーを無事に返却し、港の待合所でまったり。
時間に余裕があったので港に荷物を置き、すぐ近くにある隠岐自然館の見学に行きました。
韓国に占拠されている竹島(行政上は隠岐の島町に属します)に関する特別展を開催中のため、入場料は無料だったのは幸運でした。
しかし筆者が見たいのは竹島の資料ではなく昆虫標本。職員の方に昆虫の展示についてお聞きすると、丁寧に案内していただき、隠岐の昆虫に関する資料もいただきました。
固有種・固有亜種を含む隠岐の昆虫の標本が展示されており、ゼフィルスを見て卵を探さなかったことを少し後悔。
隠岐に採集に行った際には、時間があれば一度見学するのが良いかもしれません。

高速船は欠航でしたがフェリーは運行しており、昼のフェリーに乗って七類港に戻りました。
フェリーに乗るころにはすっかり雨は止んでおり、もう少し採集すればよかったと少し後悔。
さよなら隠岐!



七類港に着くと、島根大学の虫屋さんにお会いするために連絡バスで松江へ。
某ショッピングセンターのフードコートで虫談義に花を咲かせた後、無理を言って泊めていただきました。
初めてお会いしたにもかかわらず大変良くしていただき、本当にありがとうございました!

翌朝は松江から米子市内の河川敷に移動してホンマイマイカブリを狙いました。
このあたりの河川敷に生息しているのかどうかはわかりませんが、隠岐との比較にためにも何とか山陰のマイマイカブリを採りたいものです。
午後からはまた18きっぷで長距離移動するため、採集できるのは正味2時間。
最寄駅に荷物を置いて河川敷まで歩いていくと、良さそうな環境が広がっていました。



しかしよく見ると、木が多いのは中洲だけで渡るのは大変そうです。
しばらく歩いて渡れる場所を見つけ、枯れ木に溜まっていた泥を掘ってみると…



ホンマイマイカブリを採集できました。先日採集した和歌山のものと比べると、上翅先端が発達しているように見えます。
出たのは下のような環境。



その後も周辺の朽木の中や溜まった泥から3頭採集し、合計2ペア採ったところで駅に戻りました。
情報もない中、短時間での採集成果としては満足です。



というわけで、和歌山に引き続いて山陰でも狙った虫は全種採集でき、充実した採集旅行となりました。
この日の昼からは名古屋に向けて移動し、名古屋駅前のネカフェで就寝。
翌日は岐阜の名和昆虫博物館を見学し、その裏で少し採集もしましたが採れたのはネブトクワガタの幼虫とチャイロスズメバチくらい。採集記は割愛します。
そして夕方にトシと合流、翌日のナゴヤマイマイ採集記に続きます。

最後に、お世話になった皆さん、本当にありがとうございました!


By かっきー


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